「コロナ地獄」に近づく日本 テレビが煽る悲観論、緊急事態宣言の必要はあったのか

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院内感染は医師会のせい?

 ファイナンシャルプランナーの深野康彦氏も、

「相当程度、経済は落ち込み、企業がバタバタと倒産し、我々は経験したことのない事態を前に、まさに歴史の生き証人になる」

 と危惧。それを受けて、医師で大阪大学人間科学研究科未来共創センター招聘教授の石蔵文信氏は、

「経済的損失は、人命と無関係ではありません。男性の場合、失業率が1%上昇すると、10万人当たり約25人、自殺者が増加するというデータがあります」

 と警鐘を鳴らすのだ。次のような影響も無視できまい。音楽や舞台、スポーツなどのライブ・エンタテインメント業界の惨状を、文化部記者が説く。

「3月23日までに中止、延期になった公演、試合数は8万1千件で、損失は1750億円。緊急事態宣言の期間中に損失額は倍以上に膨らみ、今後、公演団体などがバタバタと潰れていくと見られています」

 充実した文化事業から得る精神的活力は、日本人が長寿である秘訣の一つだと言われてきた。ところが緊急事態宣言は、すでに青息吐息の文化事業に、とどめを刺そうとしている。

 さらには、いま感染者が増えているという話そのものに疑問符を差しはさむのは、医療ガバナンス研究所の上昌広理事長である。

「この時期に突然、市中感染が増えているというのは、フィクションではないかと疑っています。数週間前に感染者の死亡率は3・5%だったのが、いま2・3%ほど。体制が整備され、PCR検査の件数が増えたとも考えられますが、むしろ、以前は保健所の窓口で断っていた軽症者まで診断しはじめた結果ではないか。表面的な感染者数の増加をもって、感染が拡大しているとは言えないと思う。ウイルスが日本に入ってきて3カ月。ピークをすぎている可能性すらあります」

 ただし、上氏の心配は別のところにある。

「状況が深刻なのは医療機関や高齢者施設で、国立がん研究センター、慶應病院……と、あちこちで院内感染が起こり、医療体制がクラッシュしつつある。首都圏の場合、20%以上は院内感染による感染者です」

 事実、日本医師会が早期に宣言を出すように求めたのも、医療崩壊を防げとのメッセージだった。しかし、石蔵氏によれば手立てはあるという。

「8割を占める無症状者と軽症者も、感染がわかると全員入院させていましたが、まず大阪府が、彼らをホテルや宿泊施設に移す方針を発表し、東京都も同様の方針を発表、厚労省が追認しました。これで専門病院はかなりの空床が確保できるはずです。それに、コロナ感染者が入院する感染症病棟や指定病院は非常に多忙でも、それ以外の病院では、感染を警戒して外来患者が減っている。こうして余裕ができた医師が、ホテルに移った軽症者の問診や遠隔診療を行えば、医療崩壊防止に貢献できます」

 また、オンラインによる遠隔診療が導入できれば、

「病院にコロナウイルス感染の自覚症状がない患者が紛れ込む危険性を減らすことができます」(同)

 院内感染の防止にてきめんだというのだ。ところがジャーナリストの長谷川学氏によれば、

「最初からオンライン診療が認められていれば、新型コロナウイルスはここまで拡散しなかった。ところが、これに日本医師会が反対してきたのです。オンライン診療が普及したら、小さな診療所は淘汰される可能性があり、医師会執行部は中小病院や診療所のトップが多いので、導入に後ろ向きなのではないか、という声もあります」

 挙句、緊急事態宣言を求めた日本医師会。なにをかいわんや、であろう。

週刊新潮 2020年4月16日号掲載

特集「『緊急事態宣言』を生きる 」より

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