「コロナ地獄」に近づく日本 テレビが煽る悲観論、緊急事態宣言の必要はあったのか

国内 社会 週刊新潮 2020年4月16日号掲載

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 新型コロナウイルスが地獄にたとえるほどのものかどうかはともかく、状況は確実にコロナ地獄に近づいている。地獄の沙汰がカネ次第だとしても、緊急事態宣言下ではカネも失われていく。地獄の業火はいつ鎮まるか。それに包まれながら、我々はどう生きるのか。

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 我々が耐え忍ぶ1カ月。意味があれば辛抱もできようが、だれかのパフォーマンスの犠牲になるのだとしたら、どうであろう。せめて、その先の出口を見通しておきたいものである。

 東京都内で新たに確認された新型コロナウイルスの感染者数が、4月4日に117人、5日に143人と3桁に達してから、雲行きはにわかに険しさを増してきた。実はそれまでは、

「総理官邸では中枢に近づくほど、緊急事態宣言の発令には慎重でした」

 そう語る政治部記者に、この間のいきさつを説明してもらうと、

「総理周辺は、なんとか持ちこたえていると判断。“都内の新たな感染者が1日に3桁に達しても出さない。出したら経済が一発で止まってしまう”と言っていた。ところが、コロナ対策の司令塔の今井尚哉首相補佐官が、小池百合子都知事に籠絡されたのです」

 日本で緊急事態宣言を発令する必要はあったのか。感染症に詳しい浜松医療センターの矢野邦夫院長補佐が言う。

「日本の感染者は欧米に比べて少なく、いくつかの理由が考えられます。一つ目は、昔から手洗い文化があること。二つ目は、日常的にマスクの装着を嫌がらないこと。三つ目が、自粛と言われれば従う人が多いこと。それらを考慮すると欧米みたいにはならないと思う。日本には、欧米のような握手やハグの文化がないこともポイントです」

 現に、東京でも自粛は進んでいたが、小池都知事は総理や補佐官をこう口説いた、と先の記者は言う。

「自粛要請で銀座や渋谷は人が減りましたけど、夜の新宿はなかなか減りません。新宿は裏社会の人が経営に関係している店も多く、自粛に抵抗して、新たな感染源になりつつある。緊急事態宣言が出れば……」

 一方、総理はといえば、

「緊急事態宣言を出さないことで“優柔不断だ”“決断力がない最低の総理だ”などと書き立てるネットでの評価を気にして、特にマスク2枚が散々コケにされると、かなり気に病んでいました」(同)

 たしかに、ネットニュースのコメントには総理への強い言葉での非難が目立ったが、さる医師が匿名を条件にこう話すのだ。

「我々は楽観的な見通しが立つと考えても、テレビではとてもじゃないが話せません。外れたとき、ネット等でどんな非難を浴びるかわからないからです。その結果、テレビからは悲観論ばかりが発信され、緊急事態宣言を出さなければ世の末が訪れるかのごとき世論が形成されたのです」

 現在、「ニュース7」(NHK)や「報道ステーション」(テレビ朝日系)のほかにも、「真相報道バンキシャ!」(日本テレビ系)、「サンデーモーニング」(TBS系)など、報道や報道系番組が軒並み、18~22%もの視聴率を記録。「羽鳥慎一モーニングショー」(テレビ朝日系)も、過去の最高視聴率を更新している。

 いわば、テレビ業界はコロナ・バブルに沸いているのだが、そこで流される悲観論がネット民に影響を与え、総理を動かしたとしたら、困った話である。

 ところで矢野院長補佐は、

「3年後に振り返ったとき、一番いい結果になるように事態に対処する必要がある。結果の評価には二つの指標があり、一つは死亡率。もう一つは倒産件数。新型コロナウイルスが終息しても、多くの企業が倒産してしまっては意味がない。両方を考慮し、3年先から逆算することが大事です」

 と話す。1カ月におよぶ緊急事態宣言下で、二つの指標のバランスは保たれるのだろうか。緊急事態宣言すなわちロックダウンではないとはいえ、ニッセイ基礎研究所のシニアエコノミスト、上野剛志氏が言う。

「1都3県でひと月ロックダウンが続けば、4・6兆円のGDPが失われる」

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