コロナ禍で地獄を見た「民泊経営者」に降臨した「ワケありカップル」

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築40年ワンルームでも月に20万円

 九州で10カ所27室の民泊施設を管理受託している田尻和正(45)さんは、この半年で天国と地獄を味わった。

 民泊事業に乗り出したのは、2017年6月。当時は福岡市内で医療関係の仕事をしており、空いている時間を活用しながら二足のわらじを履いてきた。稼働は絶好調。築40年近いワンルームでも一部屋で月に15、20万円稼ぐこともあった。

 昨年11月には過去最高売り上げである300万円を記録。その間、日韓関係の悪化を受け、3割を占めていた韓国人旅行者がゼロになったものの、東南アジアからの利用者が増加し、売り上げをカバーした。「東京オリンピックまでは伸びる。必ずいける」と確信し、管理物件を増やして、仕事も民泊一本に絞った矢先だった。
 
 最初の異変に気づいたのは、ヨーロッパ方面から来る予約者のメールだった。

「中国での肺炎の影響は日本ではないですか?」

 同じような質問メールが少しずつ入り出す。

「現在の日本では特に影響ないですよ」と返信を繰り返した。しかし、ついに2月中旬、シンガポールの予約者から「シンガポールでコロナウイルスが発生したので旅行をキャンセルしたい」というメールが届き、そこからは毎日のように2月~4月のキャンセルが入り始めた。結果、3月の稼働率は10%まで落ち込んだ。

 そしてとどめを刺したのが3月30日、小池百合子東京都知事の緊急記者会見により、わずかに残っていた日本人の国内旅行予約も全て解約。予約のカレンダーは真っ白になったという。
 
「とりあえず何かやらねば」。収入が絶えた田尻さんは大幅な値下げに踏み切る。1室3900円の宿泊費用は2500円に。二人で泊まれば1名1泊1250円で済む。すると数組の外国人カップルなどから予約が入り出した。

 すでに日本への入国は制限されていたことから、事情を聞くと、「九州を旅行中だったが帰国が困難になった」「LCCが飛ばず、高い飛行機しかないので身動きが取れない」「帰国しても14日間の検疫があり、仕事は解雇された」「母国の方が危険、日本に居る方が安全」など様々な回答が返ってきた。

「今までのインバウンドバブルで世話になった外国人客だ。ニーズがあるのであれば、もっと受け入れたい」。田尻さんは思ったが、2500円では赤字を垂れ流すことになる。友人や知人に相談すると、カンパしてくれる人もいた。

 地元にはこれまでインバウンドで潤ってきたという観光関連事業者も多く、コロナ問題が収束したら、また日本に旅行にきて欲しいという期待もあると言われた。
 
 そこで、Airbnbのホスト仲間に声をかけ「帰国が困難になった訪日外国人の方に無料の宿泊所を提供し支援します。福岡・熊本」というサイトを立ち上げ、クラウドファンディングを開始。3500円のワンルームを最大14日間、4万9000円を上限に無償で提供する考えだ。「30名くらいの支援を目標にしています」(田尻さん)

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