「献立」がお悩みな人必見! NHKの人気番組「365日の献立日記」から得るヒント

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「365日の献立日記」(NHK Eテレ)の静かな人気が続いている。昭和の名脇役で知られる沢村貞子さんが27年間一日も欠かさずに記した「献立日記」をもとに、日々のお惣菜の数々を紹介するもので、その一品一品に込められた知恵や工夫に焦点があてられる。けっして豪華な食材ではない。ありあわせのものでも、心を込めて料理をつくって、おいしく食べる。世代を超えて、こうした暮らし方がいまあらためて注目されているのだろう。

 沢村貞子さん(1908~96)は生涯に350本以上の映画に出演した名脇役女優であり、多くのエッセイを残した名文家でもあった。その半生記はNHKの連続テレビ小説「おていちゃん」のドラマにもなった。押しも押されもせぬインテリ女優なのに、生まれ育った浅草時代のつつましい食卓を忘れることなく、どんなに忙しくとも、愛する家族のために台所に立ち、食事を作り続けたという。

「私は、『女優』と『家事』のどちらをとるべきか――などと悩んだことはありません。(略)女優をやめることはあっても、暮らしをやめることはないからです」(沢村貞子『わたしのおせっかい談義』より)

 沢村さんが57歳から84歳まで毎日書き続けた「献立日記」は全36冊にも及ぶ。『沢村貞子の献立日記』(新潮社刊)では、沢村さんを敬愛してやまないフードスタイリストの高橋みどりさんが、そのすべてを読み、料理をつくり、食卓を再現している。1万日分に近い献立のなかから高橋さんが選んだいくつかを紹介してみよう。

「豆ごはん」は週に2回登場することも

「ピース御飯」は沢村さんのご主人(大橋恭彦さん)の好物だったそうだ。時に「豆ごはん」として、週に2回登場することも。

「沢村さんはだいたい春先にグリーンピースをさやごと10キロも買い込んで、茹でたものを小分けにして冷凍しておき、ごはんやおかずの材料として、1年を通して使っていらしたようですね」と高橋さん。

 そのほか、筍ごはんや松茸ごはん、栗ごはんなど、季節を味わう炊き込みごはんをはじめ、お赤飯、おにぎり、にぎりずし、ちらしずし、丼、お粥、茶めし……とさまざまなごはんが登場する。炊きたてごはんはおいしいけれど、毎日同じではやっぱり飽きる。バリエーション豊かなごはんは「作り手の思いやりと愛情以外の何ものでもないのです」(高橋さん)。

一品一品に込められた知恵や工夫

 夫婦二人だけの食卓では、魚一尾まるごと買うと、一日ではもちろん食べきれない。初日はお刺身。残ったら切り分けて冷凍するか、みそ漬けや粕漬けにする。残った身やあたま、身のついた骨は後日あらだきに。あるいは煮ものにもなる。沢村さんもそんなふうに残った材料をうまく使い、おいしく食べつくしていたのだろうと高橋さん。

「きんぴらのような常備菜も作っておくと便利で、これが加わるだけでちょっと得した気分になるものです」。献立日記を読み込むと、沢村さんがいかに工夫していたかがよくわかる、と高橋さんは言う。

暑い暑い真夏の天ぷら

 最後は真夏の献立から。真夏の天ぷらだ。

「ぬるめのお風呂でサッパリ身体を洗ったあと、気軽な浴衣がけで揚げたての車えびやきすなど口にしたときのしあわせ……一日の疲れがスッととれるような気がする」(沢村貞子『私の台所』より)。

 じつに食欲がそそられる。暑い暑い日本の夏、栄養のある天ぷらは夏バテ防止にもなる。

 ところが、沢村さんをしても、天ぷらのあとかたづけは面倒だったようだ。後始末がだんどりよくゆくように工夫を重ねることで、気楽に天ぷらをこしらえるようになったとか。

 きちんと作って、おいしく食べる。それはきちんと生きることにつながるのかもしれない。沢村貞子さんの心のこもった献立を参考に、すべては難しいけれども、少しだけ真似してみるのはいかがだろう。

2020年4月11日掲載