「東京五輪」は来年も開催できない!

国内 社会 週刊新潮 2020年4月9日号掲載

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「計画通りの開催」に拘ったお偉方もあっさり陥落である。1年間の延期が決まった東京五輪。が、「コロナ禍」が来年には収まっているという保証はどこにあるのか。パンデミック“予言の書”を著したとして話題の作家・楡周平氏が、あまりに楽観的な見通しを斬る。

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「『1年』の根拠って一体、何?」

「何でそんなに楽観的に物事を考えられるの?」

 先日の安倍総理の会見を見ながら、私は思わず呟いてしまいました。

 五輪は「中止」ではなくて、「延期」。これで救われた。そう考えた国民も多かったはず。でも、それは「1年」で片が付いた場合の話です。果たして、新型コロナはそんなに簡単な相手なのでしょうか。

〈楡氏の著書『サリエルの命題』(2019年6月、講談社刊)に注目が集まっている。ある“事情”で突如、日本に発生した新型インフルエンザ。離島の住民は全滅し、本州にも感染者が出た。頼みの治療薬も不足し、1年を切っていたオリンピックの開催も危機に……。未知のウイルス、都市封鎖、そして五輪開催の是非と、まさに現在の日本が直面する課題が次々と登場する“予言の書”。その生みの親である楡氏は、現実となったこの危機をどう捉えているのか。〉

 はっきり言えば、私は1年で片が付くとは思えない。付けばラッキー、くらいの感覚でいます。

 その最大の理由は、この「延期」がもっぱら日本や欧米など、いわゆる「先進国」の現状を前提に発せられているからです。これらの国々では既に感染が広がり、ピークを迎えつつある状況。だからこその「1年」なのでしょう。

 しかし、これらの国々の後に感染が広がると見られているのが、アフリカ、東南アジア、中東、南米など、いわゆる「途上国」です。これらの国々にコロナが本格的に広がれば、その被害は先進国の比ではありません。これらの国では、衛生状態も、栄養状態も先進国のそれとは違う。医療体制も貧弱です。新型コロナの治療に必要な人工呼吸器も人工肺も、先進国とは比べ物にならないほど少ない。おそらく発生する死者の数も、先進国とはゼロが1桁異なる数となるでしょう。

 とりわけ注視すべきはアフリカです。ご承知の通り、中国はアフリカの資源に目を付け、莫大な資金を投下し、人もたくさん散らばらせている。それを考えれば、新型コロナが爆発しないワケがない。今後、広がっていくであろう感染が、果たしてわずか「1年」で終息しているのか。また、終息したとして、オリンピックに選手を送り出せるほどの国情に回復しているのか。考えれば考えるほど、「完全な形での五輪」は困難に思えるのです。

 そもそも「1年」では、先進国だって決して楽観視は出来ません。このまま感染のピークが1カ月2カ月続いたら、経済はどうなるのか。コロナ騒動で株価は一気に下落し、大きな衝撃を与えました。今は一旦持ち直していますが、これはアメリカが大型経済対策を出すことへの期待、言わば「思惑買い」であって、企業活動が停止したままであれば、今度は一直線に「奈落の底」へと落ちるでしょう。そうなれば、いよいよ「恐慌」です。実際、アメリカでは、3月第3週、失業保険の申請が約330万人に達しています。あの「ウォール街大暴落」の際にアメリカで発生した失業者は1500万人と言われていますから、「大恐慌」の足音は確実に近付いている。

 そして、先進国が恐慌に陥れば、より脆弱な途上国の経済はひとたまりもない。その状況でオリンピックに人や資金を割く余裕があるのでしょうか。

 以上述べたようなことは普通の想像力を働かせれば簡単にわかるはず。それなのになぜ「1年後」なのか。仮に「再延期」となれば、経済損失は今の比ではないですよ。首相もバッハ(IOC会長)も、収束の目途がつくまで、延期の時期など迂闊に言うべきではなかった。あまりに考えが甘すぎます。ワクチンの開発に1年半はかかると言われていますし、治療薬もまだ確立されていないですからね。

 来年の夏にやらなければ困る“事情”がある人たちが「そのうち何とかなるだろう」というレベルの感覚で言ったとしか思えない。これじゃ植木等の世界で、「無責任」極まりません。情けないを通り越して、もう笑ってしまいますよ。

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