韓国人の奇妙な国民感情、官邸へ新型コロナ“輸出用検査キット”に「独島」と命名の請願

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韓国で買いだめが起きていない理由とは

 韓国が今回の新型コロナウイルス問題を巡って、世界に誇っていることがもう1つある。それは目立った買いだめが起きていないことだ。前述の「ニューヨーク・タイムズ」は、「(韓国の)世論調査は多数が政府の努力を高く信頼していることを示しており、パニックや買いだめも少ない」と報道。また同じく「ガーディアン」も次のように伝えている。「買いだめが見られる感染国と対照的に、韓国人はおおむね冷静だ。買いだめは伝えられておらず、行列を作っているのは検査を受ける人かマスクを買う人たちだけだ」。

 韓国ではなぜ買いだめがさほど起きていないのか。現地メディアがその理由についてあれこれ分析している。2004年の重症急性呼吸器症候群(SARS)、2009年の新型インフルエンザ、2015年の中東呼吸器症候群(MERS)といった過去の事例からの学習効果が、その1つ。またオンライン通販の物流網が生活の隅々に浸透している点も理由に挙げられている。2月中旬には生活必需品の需要が急増して遅配が発生したが、すぐ平常に戻ったという。このオンライン通販に加えて大手量販店チェーン、コンビニ、個人経営の小規模スーパーなど流通チャネルが豊富かつ多様な点も、市民に安心感を与える要因とのことだ。

「分断国家の不感症」を理由に挙げる分析もある。つまり北朝鮮との軍事的緊張下で日々暮らしている韓国人は、危機に対してよくも悪くも鈍感というわけだ。

花見と買いだめ…韓国メディアが見た奇妙な日本の「2つの顔」

 まだ楽観にはほど遠い状況とはいえ、コロナ対応に一定の自信を見せている韓国社会。一方で彼らから見た日本の状況は、あまり望ましく映ってはいないようだ。

 韓国公営放送KBSは3月26日、「感染爆発? 日本の『2つの顔』…買いだめ vs. 花見の人出」と題したルポを伝えている。まずレポーターが東京の代々木公園を訪れ、「飲食を伴う宴会等の利用をお控えいただきますようお願いいたします」という立て看板のそばで花見を楽しむ大勢の人々の姿を紹介。続いて買いだめにより陳列棚がほとんど空になったスーパーを取材し、2つの光景の奇妙なコントラストを強調して報じていた。

 このレポートではもう1つ、気になる話もさらりと紹介されている。それは、輸出用コロナ診断キットを「独島」と名づけるよう求める運動が起きていることだ。

輸出用韓国製診断キットを「独島」と命名?

 韓国紙「韓国経済」によると、これまでに韓国に診断キットなどの防疫物資の支援を求めてきた国々は約120。韓国では5つの民間企業が政府の承認を受けて1日あたり13万5000個の診断キットを製造しており、輸出の余力はじゅうぶんにあるという。KBSによれば、すでに輸出されている国はアメリカをはじめ40カ国超に上る。

 この韓国製診断キットに「独島」、つまり日韓間で領土問題となっている島根県・竹島の韓国名を名づけてほしい――。韓国大統領官邸ホームページにこんな「国民請願」が寄せられたのは、3月25日のこと。1カ月以内に20万人の同意を得た請願には、官邸ないし政府関係者が何らかの回答を行う決まりだ。請願への同意は、4月1日時点ですでに33万件を突破。メーカー1社の代表は3月27日に出演したラジオ番組で、「現在他社と(診断キットの)ブランド名について協議中だ。じゅうぶんに考慮できる状況だと思う」と発言した。

 ただし異論もなくはない。「韓国経済新聞」は、すでに韓国が「実効支配」している「独島」を紛争地域だと世界に認識させる恐れがあるとした。また「独島」や慰安婦問題などでの対外広報に熱心なソ・ギョンドク誠信女子大学校客員教授も、「世界中で多くの人が亡くなり、生活に打撃を受けているなか、むしろ純粋な善意で世界の防疫に協力するほうが、韓国のイメージを高める上でより大きな助けになるでしょう」と慎重な対応を促している。

 問題の国民請願の期限は4月24日。それまでコロナ問題がどんな経過を辿るのか、まだ誰にも予想がつかない状況だ。

高月靖(ノンフィクション・ライター)

週刊新潮WEB取材班編集

2020年4月9日掲載

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