特効薬「アビガン」だけじゃない、新型コロナに“効く”医療事情

国内 社会 週刊新潮 2020年4月9日号掲載

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 安倍総理は会見で、アビガンの治験を始めると明言。ほかの薬についても言及したが、薬さえあれば、状況は一気に好転するという。

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 免疫学が専門の順天堂大学特任教授、奥村康氏は、

「新型コロナウイルスは強い風邪みたいなもの。早くみなかかれば、免疫ができて早く収まりますが、封じ込めようとすれば、ずっと続く。ある程度の犠牲者は仕方ないのかもしれません。一人の命は地球より重いという選択をすると、経済が止まってより大きな被害を生んでしまいます」

 と危惧し、集団免疫の有効性を訴える。犠牲もやむなしという主張には、抵抗がある方も多かろうが、薬があれば話は違う。

「治療薬が普通に使えるようになり、3%だった致死率が0・1%とかに下がれば、怖くない病気、ありふれた病気になります」

 と話す長野保険医療大学の北村義浩医師は、富士フイルム富山化学が開発したアビガンに期待を寄せていたという。事実、この薬については、3月17日にも中国科学技術省の担当者が、「安全性が高く効果も明らかで、正式に推薦する」と述べていた。

「アビガンはインフルエンザの薬として、日本ですでに承認され、安全性試験も終えている。副作用の出方もわかっているので、明日解禁してもいい。ところが総理は会見で、“治験を開始します”と言っていたので落胆しました」

 では、北村医師はどんな期待を抱いていたのか。

「インフルエンザのための薬をコロナウイルスに使うには、あらためて治験が必要ですが、いまは治療薬を臨床で使えるようにするのが急務。中国で治験した千人分のデータをもらって専門家会議で決断すれば、1週間後にでも供給を開始できます。他国のデータをもらって承認すれば無駄がなく、WHOもそうすべきだとの考えです」

 そして、過去のこんな例を挙げる。

「1958年、ポリオウイルスが大流行し、お子さんが何人も亡くなり、助かっても障害が残り、お母さんたちが厚生省に押しかけました。当時、アメリカ製とソ連製のワクチンがあったのですが、どちらも日本で治験が終わっておらず、政府は子供たちに注射できないと突っぱねていた。そこに当時の厚生大臣が、“私の一存で輸入させる”と言ってワクチンを輸入。あっと言う間にポリオの患者数は減りました。いまも加藤厚労大臣が“やる”と言えばすむ話なのです」

 ところで、先にアビガンの副作用についての言及もあった。国際医療福祉大学の松本哲哉教授が説明するには、

「動物実験によって、胎児に奇形が生じやすいことがわかっています。人が服用する際は、妊娠する可能性がある女性には使わず、男性も飲んだら避妊する、というのが前提です。このため新型インフルエンザのときは、私も審査の委員になっていて議論を尽くしましたが、一般の処方薬としては難しいのではないか、という話になった。ただ、有効性があるので、備蓄という形になりました」

 その結果、現在200万人分の備蓄があるという。また、副作用が胎児への影響であるなら、高齢者に投与する分には問題なかろう。再び北村医師が言う。

「日本の人口の1%がかかったとして130万人。感染者の8割は軽症ですから、重症化するのは20万~30万人です。増産しなくても200万人分あれば、国内分は余裕で賄えます。」

 菅官房長官は各国に無償提供するとも明かしている。一方、日本では、

「臨床試験に1カ月くらい要し、認可がおりて保険適用されるのは、5月の連休明けごろかもしれない」

 と語るが、それでも大いなる希望であろう。浜松医療センターの矢野邦夫副院長もこう期待する。

「アビガンが承認され、開業医も使えるようになって、軽症の患者にも処方できるようになれば、死者は激減すると思う。2009年の新型インフルエンザの際はタミフルがありました。アビガンが新型コロナにとって、タミフルのような存在になるのを期待します」

 もっとも、北村医師が一番期待するのは、アビガンではないというのだ。

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