コロナ対策で「文在寅」の人気急上昇 選挙を控え「韓国すごいぞ!」と国民を“洗脳”

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「全員検査」という誤解

――確かに、韓国は「全員検査」で有名ですからね。

鈴置:「全員検査」というのは完全な誤解です。韓国も日本と同様に、新型肺炎の感染が疑われる人にしか検査をしていません。

 3月31日午前0時現在の累積検査件数は41万0564件。韓国の人口は約5200万人ですから1人1回の検査としても、0・8%の国民にしか実施していないのです。

 韓国が検査件数を急速に増やしたのは事実です。2月19日に第4の都市、大邱(テグ)で巨大なクラスター(感染者の集団)が発見されたからです。

 中央防疫対策本部の報道資料(2月17日)によると、中国からの入国者による感染の発見――韓国ではこれを第1波と呼びます――が一段落し、第2波の大邱の大型クラスターが発見される前の、2月16日午前9時からの24時間で全国の検査件数は252件でした。

 それがたった10日後の、2月26日午前9時からの24時間では1万1863件と47倍に増やした――増やさざるを得なくなったのです(「中央防疫対策本部の報道資料(2月27日)」参照)。

 大邱で発見された大クラスターは新天地イエス教会という新興宗教。1000人規模で集団礼拝していたので、信者とその家族は集中的な検査の対象となりました。

 3月末時点で、大邱とその周辺の慶尚北道(キョンサンプクト)での感染者は全体の82%を占めます。大集団の中から感染者をより分けるために、大量の検査をせざるを得なかった――のが実情です。

 日本や米国も、クルーズ船という潜在的なクラスターを発見した際には乗客・乗員の全員を検査しました。それと同じで、韓国も感染が疑われる人の集団を発見したので検査したに過ぎません。

 ただ、クルーズ船の乗客・乗員はせいぜい4000人弱。一方、新天地イエス教会の信者は全国で約20万人。その家族も含め、韓国では検査すべき人が桁違いに多かったのです。

大邱で起きた医療崩壊

――韓国も希望者全員に検査しているわけではないのですね。

鈴置:もちろんです。1日の検査能力が1万件以上に達した今では、検査する基準も緩めたようですが、当初は新型肺炎に感染した可能性が高い大邱市民も、クラスターと関係がないと検査を拒否されました。

 2月22日に肺炎の症状が出た70歳の女性は「中国を訪問しておらず、新天地教会と関係がなく、熱もない」との理由で新型肺炎の検査をしてもらえませんでした。

 大邱の病院も対応能力の限界を超えていたのです。結局、この女性は入院できず、2月28日に死亡しました。死後に新型肺炎に罹っていたことが判明しました。

 KBSの「『いっそ新天地の信者と言っておけば』 14番目の死者の家族の涙」(3月1日、韓国語版)がこの話を伝えました。

 大量の患者が一度に発生したことにより、大邱では医療崩壊が起きたのです。なお、「検査のし過ぎが医療崩壊の原因だ」と見る人もいます。

 確かに、大邱では不安に陥った人々が検査を求めて病院に押し掛けましたから、そこで感染したり、医療関係者に感染させる――というケースもあったと思われます。

 ただ韓国では、医療崩壊――適切な医療を施せなかった主因は、軽症患者まで入院させたため病床が埋まってしまい、重症患者を自宅で待たせざるをえなくなったため、と考えられています。「検査過多」ではなく「患者の仕分け」で失敗した、との認識です。

 大邱以外の地域でも、クラスターに関係がない人は検査を受けたくとも受けられませんでした。

 KBSは「『大邱の新天地から戻った』と嘘をついて検査を受けた20代が拘束」(2月27日、韓国語版)で「大邱の新天地イエス教会から戻った」と嘘をついて検査を受けた人が逮捕された事件を報じました。

メルケルも韓国を称賛した?

――「検査件数が多い」ことは別段、誇れないのですね。

鈴置:冷静に考えれば「検査すべき対象が多い」という――不幸な状況を意味します。そこで韓国政府は「検査能力は国力の証(あかし)だ」と国民を洗脳したのです。

――韓国人はそんなに簡単に洗脳されるのですか?

鈴置:歴代政権の常とう手段ですが「世界が韓国を称賛している」ことにしたのです。中央日報の「仁川空港の検疫を視察した駐韓外交団『韓国はよく対応している』」(3月14日、日本語版)が典型です。

 外交部が韓国に駐在する外交官を仁川(インチョン)国際空港に招き、その検疫体制を説明した、という記事です。見出しだけ見ると、世界の外交官が韓国を褒めたことになっています。が、本文を読むとそれは伝聞に過ぎません。以下です。

・現場に参加した駐韓外交団は「現場で見るのと、説明だけを聞くのとは違う」「韓国はよく対応している」という反応を見せたという。

 聯合ニュースの「新型肺炎が『野火』になったドイツ、遅ればせながらメルケル登板…今や『韓国に学ぶ』」(3月14日、韓国語版)も空(から)見出しでした。

 この記事はドイツでも感染者が急増し、メルケル首相が3月11日になってようやく会見で緊急事態であると訴えた、との内容です。

 見出しでは、メルケル首相が「韓国を手本にしよう」と言い出したことになっています。でも、本文のどこにもそんな記述はない。

「週刊誌シュピーゲルが、ドイツも韓国のように高い検診率を達成すべきだ、との専門家の談話を報じた」と書いているだけです。

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