新型コロナの感染源は日本人――インドネシア政府がついた姑息過ぎるウソの顛末

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「日本人は出ていけ!」

 筆者の友人らも、罵声を浴びたり、差別を受けたりなど、ハラスメントを受けたと証言する。「レストランで『日本人は出ていけ!』といわれた」「スーパーマーケットで日本人とわかるや否や『コロナを持ち込むな!』」「GoCarやGRAB(※現地で盛んなUberのような配車サービス)を利用したら乗車拒否にあった」「スポーツクラブで日本人は離れた場所でランニングするよういわれた、中国人は許されていたのに……」などなど。日系企業の日本人経営者に「日本人スタッフはマスクを着用させるべき」とインドネシア人スタッフが詰め寄った、なんて事例も報告されている。

 在インドネシア日本大使館には、新型肺炎に関する差別やハラスメントを受けたという相談が寄せられ「日本人に対する悪質な嫌がらせ等の行為に関する邦人向け相談窓口」が設置されたほどだ。3月9日には、石井正文大使が「インドネシア在住の日本人は、コロナウィルスの感染源ではなく、インドネシアの友人です」とのメッセージをHPに掲載した。

 筆者の取材に、在インドネシア日本大使館の担当官は「嫌がらせを受けたとの相談件数はおよそ20件ですが、これらは氷山の一角です。大使館に届けられない事情が多くあったと認識しています」と被害実態を明かした。なかでも子供達が嫌がらせや差別的言動にあったという。

「3月上旬に、日本政府として大統領府、外務省、保健省に抗議を申し入れ、再発防止を要請しました。特定の国を名指しするようなことをしないと約束してくれましたが……」(同)

 英語版Wikipediaの新型肺炎国別特集内の「インドネシアのコロナウィルス」のページには、感染源は日本(origin-Japan)」との誤った記述もあった。これを伝えると「外務省を通じて対処します」と担当官は即答。現在は削除されているものの、私の指摘がなければ放置され、「インドネシアにおけるコロナの起源が日本」だとの間違った情報が、世界に拡散してしまう恐れがあった。

 こうした状況に対し、日本の一部メディアの中には「日本人が文句をいわないから、狙われた」という自虐的な解説をする記事がみられた。誤解を恐れずに言えば、私自身も、ここまでエスカレートした背景には、日本人のイメージも関係していることは否めないと思っている。東南アジアではとかく、優れた技術を誇り、自制心を身に着けた日本人は、“勤勉で文句をいわない品行方正の民族”として尊敬を集めている。その一方、「だまされやすく、怒らない、大人しい」というイメージも強い。筆者も「危険を感じたら、『自分は中国人や韓国人だと言ったらいい』」とインドネシアメディアの友人から忠告されたこともある。

 だからといって、決して、ハラスメントが許されていいわけがない。一歩間違えば犯罪に相当する行為を「日本人が抗議しないから」という一部メディアの主張は、甚だお門違いの話だ。

 国家元首が先導するかたちで、根拠のない濡れ衣を日本人に着せたのも問題である。以前、隣国マレーシアのマハティール首相(当時)にインタビューした際、首相は「『日本の恥の文化』は世界的な希少価値」と語った。到底、インドネシア政府には、理解できない価値観だろう。

 何より私が問題視するのは、インドネシア政府ならびにジョコウィ大統領は、意図的に日本人に濡れ衣を着せようとしていた節がある点だ。

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