「アベ大恐慌」に備えよ 新型コロナと“人気取り政策”が国民の財布を直撃

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「手当」も「残業代」も

 家計を襲う「4月危機」のリスク要因に挙げられるのは、まず“同一労働同一賃金制度”の施行だ。

 働き方改革の一丁目一番地とされるこの制度は、正社員と非正規社員の不合理な待遇格差を禁じるという趣旨で、新年度から“大企業”に導入される。

「人件費の高騰に喘ぐ多くの企業では、賃金の引き上げは困難。そこで正社員の収入を減らすことで格差をなくす企業が多いと予想されます。その際、メスが入るのは正社員に手厚い各種の“手当”です」(深野氏)

 すでに日本郵政は“住居手当”を段階的に廃止する方針を発表。他の企業がこれに追随し、住居手当以外に、家族手当や扶養手当に波及する懸念もある。

 さらに、過労防止のための時間外労働の上限規制、いわゆる「残業規制」が4月から中小企業にも適用される。

 大企業では昨年4月の「働き方改革関連法」の施行と同時にこの制度が導入されたが、

「この制度によって、繁忙期でも年間720時間を超える残業ができなくなります。いくつかのシンクタンクの試算では、仮にこの上限規制が全企業に適用されると、残業代が年間8兆5千億円減少するとされる。正規・非正規を合わせた日本の全給与所得者は約5911万人なので、ひとり当たり年間14万円の減収となります。共働き家庭なら家計のマイナスは2倍の約28万円にのぼる」(同)

 およそ9兆円の残業代が失われ、一家の財布から大卒者の初任給以上の手取りが消し飛ぶ計算だ。

 これはあくまで平均であり、失われる残業代がもっと深刻なレベルに達する家庭もあるだろう。

 同時に、コロナ禍の影響でボーナスも危険視される。

「大企業の社員は年収の3割弱をボーナスが占めています。今夏は持ち堪えても、冬のボーナスには悪影響が及びかねない」(同)

 住宅ローンはもちろん、子どもの学費や保険料の一括払いでボーナスを当てにしている家庭は、大幅な生活設計の見直しを迫られる。

 また、キャッシュレス決済によるポイント還元も6月30日に終了。最大5%のポイント還元を受けられるこの制度は、消費増税の“目くらまし”として一定の効果をあげてきたが、それも3カ月余りを残すばかりだ。

 令和2年度の幕開け早々、家計が多重苦に苛まれるのは火を見るより明らか。

 働き方改革の影響で手取りが削られ、冬のボーナスも半額にカットされると、

「最悪の場合、年収が1割近く減ることも。500万円の年収が450万円になると、たとえば、貯蓄に回していた50万円がなくなり、カツカツの生活だった家庭では一気に赤字へと転落してしまう」(同)

 大企業では「残業規制で手取りが月4万~5万円減った」と話す営業職社員もいる。ボーナス減と合わせて年間100万円の収入を失うケースも珍しくないのだ。

 安倍政権による人気取り政策が、コロナ禍に喘ぐ国民生活により一層の負担を強いるのであれば、もはや“人災”の誹りは免れまい。

週刊新潮 2020年3月26日号掲載

特集「『新型コロナ』との消耗戦 『アベ大恐慌』に備えよ」より

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