政府の危機管理能力に疑問の声が続出 民間企業よりも後手後手?

国内 政治 2020年3月6日掲載

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 新型コロナウイルス問題に関連して、安倍内閣の危機管理能力を疑問視する声は少なくない。

 もともと「反アベ」的なスタンスの人からだけではない点が、これまでとの大きな違いだろう。総理と親交がある作家の百田尚樹氏は、中国での集団感染が判明した直後から、このウイルスの危険性に警鐘を鳴らし、1月末の時点では政府の対応の遅さに業を煮やして、「安倍総理には危機管理能力が欠如している」と批判のツイートをしている。

 振り返ってみれば国民の頭には数々の「なぜ」が浮かび、放置されたままだ。「なぜすぐに入国制限をしなかったのか」「なぜ入国制限の地域を中国の一部に限定したのか」「なぜチャーター機で帰国した中で検査拒否する人を許したのか」「なぜ帰国者はホテルで相部屋になっていたのか」「なぜクルーズ船を大した策もないまま受け容れたのか」「なぜクルーズ船から降りた人は電車に乗って帰るのか」「なぜ世界に向けての発信ができないのか」等々。そして最新のものは「なぜ唐突に全国一斉休校を要請したのか」あたりになる。

 もちろん相手は未知のウイルスであり、そう簡単に対処できる問題ではない。

 ただ、企業の中には政府よりも先手を打っていたところも少なくないようだ。

 この間、企業の危機管理はどうなっていたか。危機管理コンサルタントの田中優介氏に聞いてみた。田中氏が代表を務める(株)リスク・ヘッジは国内の様々な企業にコンサルティングを行っている。

「時系列を見ると、日本国内のメディアで、『中国の武漢で新型肺炎が発生した』と最初に報じられたのは、1月5日です(産経新聞、中日新聞)。

 さらに国内で感染者が確認されたのが1月16日。武漢から帰国した男性です。

 実は多くのグローバル企業は、この段階で対策本部を立ち上げていました。中国に生産拠点を置く企業はもちろんのこと、そうでなくても最悪の事態を想定して、自社の取るべき選択肢を検討しています。

 1月23日に武漢が封鎖されました。この段階では、ドメスティック企業でも対策本部を立ち上げるところが出てきていました。弊社のクライアントの多くもここで対策本部を立ち上げています」

 政府が閣僚らを含む「対策本部」を立ち上げたのは1月30日。それまで各省庁、担当者レベルで対応はしていたのだろうが、国民からは迅速な対応とは受け止められなかった。少なくとも多くの国民の目に映ったのはこの間、厚労省の官僚が「今日はこんなことがありました」と発表する姿程度だったのは間違いない。政府がどのような想定をして、どのような対策を打ち出しているのかが不明なまま、ただ「パニックにならないよう」といった空虚な呼びかけだけが繰り返されたのだ。

 その後の顛末は言うまでもないだろう。そして2月末には唐突な「一斉休校」の要請と、それを受けての安倍総理の記者会見が行われた。休校そのものは賛否両論分かれているものの、総理の会見自体を評価する向きは少ない。

「私たちは企業相手のコンサルティングをしており、政府の対応については情報も足りないので軽々に評価はできませんが、かりにクライアントに何らかの不祥事が発覚した場合には、たとえば以下のようなことをアドバイスしています。

 まず社内での意思統一は必要不可欠。そのためには関係者、担当者間の『根回し』をしなければなりません。取材に対して、人によって言うことが違う、となると、その企業の印象は悪くなります。

 また、どれだけ誠意をもって、プラスの施策を打ち出したとしても、必ずマイナス面は生じます。ですから常に『プラスと思うことのマイナス面を見逃さないでください』とアドバイスをしています」(田中氏)

 一斉休校に関して言えば閣僚ら「対策本部」内においても「根回し」は存在せず、またそのマイナス面への配慮がなかったのは明らかだろう。国会での質疑などからは、むしろ「総理の思いつき」という印象を強化することになってしまった。

 ちなみに田中氏の著書『地雷を踏むな』の中には「謝罪におけるNG事項」が解説されている個所がある。「遅い謝罪」「時間足らずの謝罪」「あいまいにボカした謝罪」「言い訳や反論まじりの謝罪」「ウソと隠蔽まじりの謝罪」「贖罪のともなわない謝罪」は、謝罪会見などの際に「やってはいけない」ことなのだという。

 謝罪ではないものの、総理会見をこの視点でチェックしてみるとどうなるか。

 会見が一斉休校要請の2日後というのは「遅い」という反応を招く一因となっただろう。「どうすればいいの?」という困惑や憤りが広がるのを放置したも同然だからだ。

 また、まだ記者が質問しようとしていたのにさっさと会見場を後にしたことは、「時間足らず」という印象を国民に与えただろう。

 さらに、国民に様々な自粛を要請しながら一方で、身内がパーティーを開いていたことは「贖罪のともなわない」行為と思われたがゆえに不興を買ったという面は否定できない。

 信頼を失いつつある政府に有効なワクチンは存在するのだろうか。

デイリー新潮編集部