北朝鮮の「ミサイル」改め「飛翔体」「発射事案」 言葉遊びの裏側は

国際 韓国・北朝鮮

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 新聞もテレビのニュースも、新型コロナウイルス一色だ。かき消されそうな話題のなかには国の一大事とも呼べる北朝鮮問題も含まれているが、安倍政権と自民党はと言えば……。

 韓国軍合同参謀本部は3月2日と9日、北朝鮮がそれぞれ2発と3発の“飛翔体”を発射したと発表した。日本政府も国家安全保障会議を開き、米国と情報共有に努めているという。そもそも北朝鮮がミサイル実験を行っているのは明白だが、なぜ“飛翔体”と呼ぶのか。

 龍谷大学の李相哲教授によれば、

「昨年5月に北朝鮮が発射した際、韓国軍合同参謀本部は短距離弾道ミサイルと発表したものの、その40分後に“短距離飛翔体”と訂正したんです。これは親北朝鮮政策を進める文在寅大統領への参謀本部による忖度にほかなりません。参謀本部がミサイルと断定すれば国連安全保障理事会の制裁決議違反に該当し、文大統領がせっかく築き上げてきた南北融和ムードをぶち壊しにしてしまいますからね」

 とはいえ、日本政府もこれまで同じく“飛翔体”と呼んでいたはずだ。なぜ韓国に合わせて気兼ねするのか。

「飛翔体では、危機感がまったく感じられません」

 と語るのは、自民党“国防族”の国会議員だ。

「国家安全保障会議の数時間後、自民党内で北朝鮮核実験・ミサイル問題対策本部の会合を開きます。政府からも官房副長官が出席して状況を説明するので、前々から“北朝鮮のミサイル発射実験は、国民生活を脅かしかねない重大事項。政府は飛翔体という表現をやめてミサイルと断言すべきだ”と要望していたんです。今回、対策本部の二階俊博本部長が強い口調で政府に意見したため、今さらですが菅官房長官は記者会見で飛翔体という表現をやめて“北朝鮮による発射事案”という言葉を使うようになり、防衛省もそれに追随する結果になりました」

 しかし、まだ単なる言葉遊びにも聞こえるが……。

 別の自民党国会議員が解説するには、

「実は、日本のレーダーでもミサイル発射か人工衛星打ち上げかの違いは識別できます。しかし、正確な情報をもらっている手前、米国より先にミサイル発射とは発表できないんです」

 つまり、米国に忖度しているわけだ。

週刊新潮 2020年3月19日号掲載

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