ハロルド・ジョージ・メイが選ぶ「人生最後に食べたい一皿」 美味しいNIPPON

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 好きな飲食店や好物の話を聞けば、その人の人となりが解るというもの。ゆえに「名は体を表す」ならぬ、「食は体を表す」なのである 。この企画では、外国籍の著名人の方々にご登場頂き、行きつけのお店をご紹介してもらいます! 意外なお店のチョイスに驚くこと必至! 彼らの食に対する感性と経験が垣間見えちゃうんです。第32回は、ハロルド・ジョージ・メイさん。今回は「Brasserie Tomo」に伺いました!!

 ハイネケン、日本リーバ、サンスター、日本コカ・コーラ副社長、タカラトミー社長を経て、現在は新日本プロレスリングの社長を務めるメイさん。

「料理にひと手間かけるとグッと美味しくなるように、ビジネスもひと手間の工夫がモノを言います」

 自著『百戦錬磨』で、プロ経営者として自身のビジネス論を語る彼が、料理人のひと手間を楽しみに夫婦でよく訪れるのが、麻布十番にある「Brasserie Tomo」である。

「落ち着いた雰囲気で安心して食事を楽しめる上、サービスもきめ細かい。ランチコースは、質のわりにリーズナブル。なにより、一品一品が芸術品のように繊細なんです」

 オーナーシェフの奥田寛成さんは、仏の名門ホテルや三ツ星レストランでの勤務を経て、在サンフランシスコ日本国総領事館料理長を2度務めた経歴を持つ。メイさん曰く、奥田さんが生み出す料理は、フレンチと和食を融合させた独創的なもので、常に驚きに満ち溢れているそう。コースで出された「前菜5種盛り合わせ」を前に、

「これを持って来たとき、シェフが、『今回は』と言って料理の説明をしたでしょう。それが意味するのは、来るたびに内容が変わるということ。奥田さんの感性によって作られる料理が本当に好きで」

 日本のプロレスというコンテンツを世界に売り込むべく奔走し、多忙を極めるメイさんだが、人生においては「エスケイプ」が絶対に必要と話す。

「ストレスと、それから逃れられる娯楽のバランスが大事で、一方がゼロでも100でもいけない。私の場合は、妻と美味しい料理を食べることだったり、最小限の荷物でソロキャンプをすることが『エスケイプ』ですね」

 その奥様とは、会社で起こったことを全て話すのが習慣。決して単なる話し相手ではなく、経験や体験を共有する大事なパートナーと考えているからだ。それは、外国人が珍しかった時代に来日し、奮闘した父母の姿を参考にしている。

「ね、見てくださいよ、このエスカルゴの料理。もう素晴らしいですよね! 私は死ぬ前の一皿はこの料理にすると決めているんです」

 そう言って目を輝かせるメイさん。束の間の「エスケイプ」を心から楽しんでいました。

週刊新潮 2020年3月19日号掲載

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