樹木希林を広告塔に… 「問題がん専門医」新著の中身

国内 社会

  • ブックマーク

Advertisement

旧い医療機器

 ただし、と放射線治療専門医が続ける。

「その治療自体は、『定位放射線照射』の一つとして、2012年から肺がん治療などで一般的な保険診療が行われています。『4次元ピンポイント照射法』との呼称を使っているのは医学界で植松氏ぐらいでは……」

 この治療を普通の病院で受けると約8万円という。高額療養費制度、平たく言えば保険がきくからだ。

「ところが植松医師は自由診療として行っています。全額自己負担です。通常で150万から200万円、高ければ500万円もの治療費を患者さんから取っている。医療倫理的に問題ですよ」

 と、「東京オンコロジーセンター」代表の大場大医師は指摘する。同時に、著作の〈医療機器もすでに13年使っています〉との記述も問題視していて、

「がんが国民病とされる現代で、放射線治療技術レベルは日進月歩で進化しています。樹木希林さんや筑紫哲也さんなど、著名人の名前を出して自分の治療の特別性を仄めかしていますが、旧い機器を使い、他の施設でもできる治療の、どこが特別だというのでしょう」

 医師が患者の個人名を出すこと自体、倫理的にどうなのかとの見方もあるが、大場医師によると、著作に出されなかった個人名も。

「たとえば元横綱の九重親方です。彼は都内の大学病院で膵臓がん手術を受けたものの再発してしまい、植松医師を頼った。しかし関係者曰く、“効果どころかアフターケアも得られず、親方は鹿児島に行ったことを後悔していた”そうです。結局、手術を受けた医師のもとへ戻ったといいます」

 有名人の“成功例”をどうとらえるかは、新刊の読み手次第であるけれど……。

週刊新潮 2020年3月19日号掲載

ワイド特集「人生の幕」より

前へ 1 2 次へ

[2/2ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。