警察官の「トイレに拳銃忘れ」頻発のワケは

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 殺傷能力を持つ“それ”を忘れる刑事なんて、文字通り“あぶない刑事”ではないか。

 昨今散見される、警察官が拳銃をトイレに置き忘れたという新聞記事。2月には長野県警の警部補が、1月には愛知県警の男性巡査長がコンビニのトイレに拳銃を忘れてしまったと報じられている。なぜか、こうした事案は増える傾向にあるようだ。発生件数を警察庁に尋ねると、警視庁を含めた全国の警察で、

「今年は3月2日までで3件。昨年は通年で3件。一昨年が2件で平成28年は0件でした」

 一般人が財布や定期入れを忘れるのとは次元が違う話。その内情を警察関係者に聞くと、

「例えば、常に拳銃を持ち歩く機動捜査隊が忘れるケースが多いと思います」

 機動捜査隊は刑事部に所属し、放火や殺人などの初動捜査にあたる。基本は私服で、拳銃を携帯。交番勤めの制服警察官は拳銃を常時携帯しているが、刑事部でも例えば、殺人・強盗を担当する捜査1課や汚職などを扱う捜査2課の捜査員らは、被疑者逮捕やガサ入れの時などを除けば拳銃を持たない。

 元神奈川県警刑事で犯罪ジャーナリストの小川泰平氏が解説する。

「交番勤務の制服の警察官であれば、交番で用を足せばよい。一方の機動捜査隊は覆面パトカーで行動。急を要する場合は、コンビニや公衆トイレを使用することもあります」

 うっかり置き忘れてしまうのは、“ズボンを下げて”用を足す場合だ。例えば、制服警察官は、帯革(たいかく)と呼ばれる厚い革のベルトを腰に巻き、拳銃を装着するが、

「私服の警察官が帯革を使用する場合、ズボンのベルトの上から着用します。拳銃を入れるホルスターを帯革に装着した上で、落下しないように拳銃と帯革を吊り紐で結びます。だから、用を足すには、帯革ごと外さなくてはならない。また、帯革を使用せず、野球用などの厚い革ベルトに直接拳銃を装着する人もいます。すると、ズボンを下ろすと拳銃が床に接してしまう。それを嫌がり、拳銃を外すことが多いと思われます」(同)

 さらに現代のトイレ事情もあると、先の関係者。

「そもそも、拳銃の扱いに慣れていない捜査員が持たされた時に、帯革ごとトイレに忘れることも。最近のトイレはフックもあれば、モノを置く台もあります。コンビニが昔に比べ増えたことも一因でしょう」

 そこはウンと気を付けていただく以外にない。

週刊新潮 2020年3月12日号掲載

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