鳥谷敬、当初からロッテが最有力と言われていたのに、ナゼなかなか決まらなかったのか

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 阪神を昨季限りで退団した鳥谷敬の“再就職先”がようやく決まった。ロッテは3月10日、鳥谷の獲得を発表、背番号は「00」となる。鳥谷は16年間にわたり阪神で主に遊撃手としてプレーし、歴代2位となる「1939試合連続出場」を記録した“虎のレジェンド”だったが、昨年、選手の若返りを図る阪神から事実上の“引退勧告”を受けて退団して新たな所属先を探していた。

<千葉ロッテマリーンズの一員となれることを嬉しく思います。今は感謝の気持ちしかありません。とにかくチームの優勝に少しでも貢献できるように精一杯、プレーをさせていただきます。>(球団を通じて発表された鳥谷のコメント)

 昨年、阪神に“引退勧告”を受けた直後、移籍先の最有力候補として挙がったのは、井口資仁監督が率いるロッテだった。井口監督は現役時代に鳥谷と合同自主トレを行うなど、“師弟関係”にあり、二人はマネジメント会社も同じだ。こうした状況から、すんなりロッテ入りが決まるかと思いきや、遅れに遅れ、すでにキャンプが終わったこの時期での入団がようやく発表された。

 なぜ、ここまで鳥谷のロッテ入団決定が遅れてしまったのか。ロッテや阪神などを取材する記者は、その理由を解説する。

「昨年、“引退勧告”を受けた直後、鳥谷の様子を球場で見ていましたが、どこか余裕がある感じでしたね。移籍先が決まっていなければ、そんな余裕もないはずで、すぐにロッテ入りが決まるのだろうと思っていました。しかし、行き先がなかなか決まらない……。ロッテを含めて複数球団が鳥谷サイドに接触したようですが、“代理人的な人物”が条件面で、いろいろな条件をつけるなど強気な要求を続けたことで、入団交渉が暗礁に乗り上げてしまった。いくら鳥谷が球界を代表するレジェンドとはいえ、今年39歳になる内野手に契約年数や年俸面などに高い条件を付けられたら、球団側はさすがに手を出しにくい。ただ、他球団との交渉が不調に終わるなかでも、鳥谷とロッテは話し合いを継続していた。その過程で鳥谷サイドが条件を下げたことで、ようやく着地点が見つかり、入団交渉が一気に進んだようです」

 一方で、ロッテ側にも鳥谷がほしい事情があった。複数のポジションを守れるユーティリティープレーヤー、鈴木大地がFAで楽天に移籍して薄くなった内野陣をどう補強するか、大きな課題になっていた。特に遊撃手の選手層の薄さはかなり危機的だ。現状、レギュラー争いは藤岡裕大が一歩リードしているが、昨季は81試合にとどまり、不動のレギュラーとは言い難い。藤岡を追う若手選手をみると、三木亮は昨年10月に右ひざを手術、平沢大河もまた右肘の違和感で出遅れている。昨年のドラフト5位で福田光輝を獲得したものの、どれだけ実戦でどれだけ使えるのか、未知数だ。このようなチーム状況を考えれば、鳥谷獲得はロッテの補強ポイントと合致したといえる。

「ロッテはもともと内野陣の若返りを進めるつもりでしたが、うまくいっていなかった印象があります。藤岡がレギュラーになるにせよ、現時点で控え候補が2枚も欠けてしまっている。結果的に、それが鳥谷への追い風になったことは否定できません。ロッテとしては渡りに船だったともいえますね」(フリーランスの野球ライター)

 果たして、鳥谷はロッテで再び輝きを取り戻せるのか。阪神の元コーチで鳥谷を指導した経験を持つ、野球解説者の正田耕三氏はこう話す。

「鳥谷は阪神時代、遊撃手以外にも様々なポジションを守りましたが、やはり遊撃手が本職です。若手の起用するチームの方針で、遊撃手として出場試合数が減少していましたが、決して、鳥谷の実力が劣っていたからではない。阪神時代の最後はやる気を維持するのも大変だったのではないかと思いますが、ロッテでは代打や守備要員としてではなく、スタメンの遊撃手として結果を残してくれると期待しています」

 ただ、鳥谷は春季キャンプに参加しておらず、調整不足は明らかだ。だが、正田氏は「調整不足が解消されれば、戦力としてまだまだやれる」と太鼓判を押す。

「もちろん最初は2軍での調整になると思いますが、あれだけの選手であれば、自分の状態はわかっています。鳥谷は野球に関して本当に紳士な選手ですし、私が知る限りでは、結果が出ていても、天狗になるようなことも全くありませんでした。戦力として、若手選手の手本として、ロッテは素晴らしい選手を手に入れたと言えるでしょう」

 鳥谷を「引退危機」から救った井口監督は、今季3年契約の最終年となり“勝負の年”になる。むろん、結果が残せなければ監督自身の去就問題に発展することも十分予想される。チームが勝ち進み、井口監督の力になるべく、鳥谷の背負った十字架は決して小さくないだろう。“虎”のタテジマから“M”のタテジマへ……。鳥谷はレギュラーを奪取して、井口監督に恩返しできるか。

週刊新潮WEB取材班

2020年3月13日掲載

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