無意味な標語は回収します――横断幕めぐり西宮市で論議に

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 街中でよく見かける標語の横断幕。それを回収するのに、珍妙な“論議”が起きている。

 舞台となるのは、自然に恵まれ、教育にも力を注いできたとして1963年に「文教住宅都市宣言」をしている兵庫県西宮市である。

〈あいさつで 広がるみんなの いい笑顔〉

 こんな横断幕が市内の学校に掲示されているのも、文教都市ゆえだろうか。一方、同市では2018年に学校などの公共施設にある1万件以上の看板類を整理するとしてルール化、マニュアルを策定している。

 担当した都市デザイン課が言う。

「公園や学校にはさまざまな看板が出ていて、本当に必要なサインが見えにくい。それを整理しましょう、というのが意図です。本当に必要な看板とは、例えば、公園であれば施設利用のルール、バーベキューやたき火の禁止などを書いたものです。学校なら、禁煙であることや関係者以外立ち入り禁止を掲出したものなどです」

 となれば、先に紹介した標語の横断幕は“不要”ということに。

「道徳啓発に類するものは、横断幕でなく、ポスターを掲示板内に貼るなどの方法を検討中。ポスターならデザインで変化もつけられますし」(同)

 だが、同じ役所内で異論を唱えるのは、この横断幕を作製した青少年施策推進課だ。

 担当者によると、

「これは12~13年ほど前に公募して、選定、横断幕にしたもので、市内の小中学校すべて61校で使われています。ほかに幼稚園では〈じぶんもあいさつ みんなもあいさつ〉という横断幕を掲出しています」

 で、どうやら撤去には後ろ向きのよう。

「啓発のために必要ですし、汚れると交換もしています。そのため、在庫がまだありまして、今回の件については現在協議中です」(同)

 ルール化しても実行しなければ意味がない。

 評論家の唐沢俊一氏はこう指摘する。

「こうした標語はなぜか七五調で作られていて、リズムが良く口ずさんでしまいます。それゆえ、かえって何を言いたいのか深く考えられず、役に立たない。むしろ、なぜ挨拶が必要なのか、理屈を学校で説明することが大事ではないでしょうか」

 むいみなら てっきょしちゃえよ おうだんまく

週刊新潮 2020年3月12日号掲載

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