【新型コロナ】更迭論も出た加藤勝信厚労相 知名度アップも安倍首相にハシゴを外されて……

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「ポスト安倍」から一歩後退

 昨年9月、再び厚労相に就任した加藤氏。野党から攻撃必至の年金制度改革の法改正を控え、「安倍首相悲願の憲法改正の障害とならないよう、無難に国会審議を乗り切ってもらいたい」(官邸筋)との思惑からの厚労相再任だったが、前評判は「経済関係の重要閣僚へのステップアップ」だっただけに、永田町では「ポスト安倍」から一歩後退したとの見方が大勢を占めた。

 加藤氏本人も2回目の厚労相になかなかモチベーションが上がらない中、数ヵ月が経過して突如降りかかってきたのが今回の新型コロナ騒動。1月中旬に中国・武漢で感染者が蔓延した時点ですでに春節(旧正月)を控えた大量の中国人が日本に入国しており、国内での一定の感染拡大は必至の状況だった。ある意味“負け戦”への対応でもあることから、安倍政権は首相ではなく、いわば身代わりとして加藤氏の陣頭指揮でダメージコントロールに乗り出すことになった。

 加藤氏は夜の会合もほとんどキャンセルし、早朝から深夜まで連日アドレナリン全開で対応にあたったが、想定外だったのがクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」での集団感染だった。狭い船内で3000人を超える多国籍の乗員・乗客を厳格に管理するのは困難を極め、船内の防疫措置の不十分さや、下船者の健康管理の不徹底ぶりなどが批判を呼んだ。加藤氏もクルーズ船対応に忙殺される毎日が続き、ウイルス感染の有無を調べる「PCR検査」の滞りへの対処が遅れた。

 「後手後手だ」との批判に、周囲には「目の前の状況に臨機応変に動くしかない」とこぼした加藤氏だが、未知の感染症への対応としてはまっとうな方法論といえなくもない。ただ、一般の国民には分かりやすい成果が見えにくく、頼りなく映るのも事実だった。安倍首相のコアな支持層には政権が中国からの全面的な入国禁止措置といった強硬策を採らないことに不満が高まっており、加藤厚労相の更迭論まで飛び出した。

 安倍首相が突然2月27日に全国一斉休校要請という“蛮勇”を振るったことで、こうした批判も収まったが、現実的な対応を続けてきた加藤氏ははしごを外された格好となった。弱点だった知名度は急上昇したものの、「ポスト安倍」として人心をつかむ政治手腕には疑問符も付けられた。

 ただ、その一方で、連日のメディア露出を通じて「新型コロナのような難題をこなせる政治家だと初めて知った」(大手企業幹部)と加藤氏の実力を見直す声も出るようになった。「政治は結果責任」といわれるが、新型コロナ騒動が収束したときに、改めて「ポスト安倍」としての加藤氏の評価が定まるに違いない。

週刊新潮WEB取材班

2020年3月11日掲載

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