【新型コロナ】五輪レスリング代表は国別枠が決まらない異常事態 10階級も未定

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 レスリングの五輪代表を決めるプレーオフ2試合が3月8日、東京都北区の味の素ナショナルトレーニングセンターで開かれ、男子フリー74キロ級で乙黒圭祐が奥井眞生を下し、女子68キロ級はリオデジャネイロ五輪王者の土性沙羅が全日本選手権で不覚を取った相手で二十歳の新鋭、森川美和に貫録勝ちし、それぞれ五輪代表を決めた。乙黒は既にフリー65キロで代表を決めている弟拓斗との「五輪兄弟出場」となった。オリンピックでメダルを量産してきた「お家芸」に話題性も増したはずだ。

 ところが、実はレスリング界は大変な危機に直面している。元凶は新型コロナウイルス。このプレーオフも前代未聞の試合だった。無観客試合の上、試合会場から報道陣すら締め出し、向かいの陸上競技場の一室に集められた。入場する際に体温を提示しなくてはならないが、体温計を貸してくれるわけでもなく受付の「各自準備してください、とお知らせしたはずです」に慌てる記者も。なんと集められた部屋には試合中継のモニターカメラすらなく各自がスマホで試合を見守るだけ。行ってみたが筆者のようなフリーランスや雑誌記者は試合後の囲み取材はもちろん、そこにすら入れなかった。

 日本レスリング協会(JWF)の関係者は「スポーツ庁からは中止の勧告もあった。プレーオフは2月の予定が土性選手と乙黒選手の怪我でこの日に延期してもらっていた。これ以上日程を変えられなかったのですが、怪我をしていた奥井選手は可愛そうだった」と同情する。報道対応については「最初、共同通信、時事通信などの代表取材としたのですが、各メディアから猛反発が起きて運動記者会加盟のマスコミに限定、各社人数も絞りました。とはいえ、フリーランスがそこまで沢山押し掛けるわけでもないのに…」と申し訳なさそうだった。

 試合映像は「協会委託」の日本テレビだけが撮影したが新聞社は一切、撮影できない。そのため翌9日の各新聞の試合写真は協会委託の女性カメラマンの写真がJWF/Sachiko HOTAKAのクレジット付きで載せられた。

 だが実は「無観客」や報道対応以上に大きな懸念がある。

 オリンピックは「日本一だから出られる」わけでない。水泳など「記録スポーツ」は標準記録がありわかりやすいが、格闘技のレスリングは国際試合を経て国別の出場枠を獲得しなくてはならない。昨年9月の世界選手権(カザフスタン)で5位以内なら枠獲得だった。この時、土性は怪我で不調だったが辛うじて国別枠を獲得していたので今回、代表が決まったわけだ。現時点(3月9日)で五輪代表が決定しているのは全18階級中、女子が5階級、男子3階級だけ。今後、女子1階級、男子はグレコローマン5階級とフリー4階級が国別枠を取らなくてはならないのだ。

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