「安倍が新型肺炎に罹ればいい」 文在寅“医学参謀”の品性なき発言のウラ

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「師団長」に極刑を

――くどいようですが、医者が「あいつが病気になればいい」と言う神経が分かりません。

鈴置:左派政権が倒れたら、この医者――金容益理事長こそが主犯として訴えられる可能性が高いからと思われます。

 発言が報じられた日の中央日報に興味深い記事が載りました。新型肺炎まん延の医学界の責任者は誰か、を追及した「医療社会主義の金容益師団、この中で新型肺炎の実力者は青瓦台のイ・ジンソク」(3月3日、韓国語版)です。こんな1文があります。

・匿名を要求した医療系の消息筋は「ソウル大学教授出身の金容益・国民健康保険公団理事長を頂点とする『医療社会主義者』らが大統領周辺に布陣し、新型肺炎への対応過程でも巨大な影響力を行使した」と語った。

 見出しの「師団」。韓国では強力な派閥を例えるときにも使います。金容益理事長こそは、文在寅大統領の防疫政策に最も影響力を持つ派閥のボス、と名指ししたわけです。

 この記事が本当かどうかは別として、これだけ明確に非難された以上、保守政権が成立したら世論は「新型肺炎の流行を助長した師団長」の極刑を要求することでしょう。

 それを防ぐには、安倍政権の防疫政策が間違ったと決めつけ、我々のやり方が正しかった、と主張しておくしかないのです。

ウイルスではなく国民同士が戦う

――結局、韓国が内輪もめする中から「日本が劣っている」「安倍は病気になれ」との発言が飛び出しているのですね。

鈴置:その通りです。世界中の国が新型肺炎と戦っている時に、韓国だけは国民同士が戦っているのです。感染者と死亡者数が増えるほどに、政権側の旗色はどんどん悪くなっているのですが。

 追い詰められた文在寅政権は、キリスト教系新興宗教の新天地イエス教会が諸悪の根源だ、とキャンペーンを張る作戦に出ました。

 どこまで本当かは分かりませんが、政府は「新天地イエス教会の信者が中国・武漢でウイルスに感染して帰国、狭い空間に密集して座ってミサを行ったため感染が一気に広まった。政府が感染の拡大を防ぐために信者のリストを要求したが、新天地イエス教会は応じていない」との情報をメディアに流し続けています。

 これは一定程度、効果があると思います。新天地イエス教会は正統派のキリスト教――カトリックともプロテスタントとも激しく対立し、もともと強い警戒感を持たれていたからです。

 それに新天地イエス教会の指導者はキャラ立ちした人で、3月2日に実施したお詫びの会見で傲慢な態度も見せました。メディアは国民の反感を掻き立てる方向で報じました。

 ただ、保守系紙は同時に「政府の責任転嫁」も指摘しています。最大手紙、朝鮮日報は3月3日、社説「国民は新天地の責任、政府の責任すべてを知っている 防疫に集中せよ」(韓国語版)の結論部分で「国民は馬鹿ではない」と書きました。「つまらぬ世論操作などするな」とクギを刺したのです。

中国には報復しない韓国

――では、やはり「反日」でごまかすしかない……。

鈴置:ええ、そうなるかもしれません。ことに安倍政権が文在寅政権をさらなる窮地に追いやったからです。「票稼ぎの反日」ではなく、「本気の反日」となるでしょう。

 3月5日夜、日本政府は3月9日以降の中国と韓国からの入国者に、2週間の自己隔離を求める方針を発表しました。ビザ発給も制限しますから、中国人と韓国人に対する事実上の入国禁止措置です。

「発表前、日本は中国には知らせたが、韓国には何の事前通告もしなかった」と韓国では報じられました。日本に軽く見られたと感じた韓国人の怒りは文在寅政権に向かいました。

 この政権がもっと困惑したことは、日本が中国人も同時に事実上の入国禁止にしたことです。韓国政府は日本に対しては直ちに6日夜、報復措置として日本人の事実上の入国禁止を打ち出しました。

 しかし、中国人に対してはそうはできない。その結果、「中国の顔色ばかり見る文在寅」とのイメージがより鮮明になってしまった。

 韓国経済新聞は社説「相次ぐ奇襲入国制限…どうして韓国はこんな国になったのか」(3月6日、韓国語版)で、そこを突きました。翻訳します。

・(日本の入国規制に対し)即刻、青瓦台(大統領府)は「相互主義に立脚して日本に対応する」としたが、相互主義というなら(先に韓国からの入国規制を敷いていた)中国にまず、適応すべきだ。

 朝鮮日報の社説「日本は遅ればせの中国遮断、世界から孤立した我が国は日本にだけ憤怒」(3月7日、韓国語版)の最後の段落の書き出しが以下でした。

・中国経由の外国人を防げない国は今や、世界の重要国の中で韓国だけとなったと言って過言ではない。

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