「安倍が新型肺炎に罹ればいい」 文在寅“医学参謀”の品性なき発言のウラ

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検査数で日本に勝った!

――韓国の失敗は分かりました。なぜ、それが「安倍よ、肺炎に罹れ」発言になるのですか?

鈴置:韓国人は何事につけ「日本よりも上手くやっているか」を気にします。2月半ばまでは、韓国の感染者数が頭打ちになるかに見える一方、日本はクルーズ船の処理にあたふたとしていました。

 当時、韓国紙や韓国人のSNSは、日本の無能を見下し韓国人の優秀さを誇る言説であふれました(「韓国で新型肺炎の患者が急増 保守派は『文在寅政権の「無能、無策」と総攻撃』」参照)。

 しかし、2月下旬に入ると韓国で患者数が急増し、たちまち中国に次ぐ世界2位に躍り出てしまった。心の拠り所が崩れた韓国人は「検査件数が多いから感染者も多いのだ」「日本には検査能力で勝っている!」と言い始めました。

 感染者が増えるにつれ、韓国からの入国禁止・制限を宣言する国が増えました。3月9日現在、入国禁止・制限国は100カ国を超えています。

「世界から除け者にされた」とショックを受けた韓国人は、今度は「入国制限国数で日本に負けたのは、日本がインチキをしているためだ」と言い出したのです。

 感染者数は本当は日本のほうが多い。しかし敢えて検査をせずにそれを隠ぺいしている。それは東京五輪を守るためだ――というロジックです。

 ことに、弾劾の対象となった文在寅政権としては「日本に負けた」と認めるわけにはいきません。そこで大統領の医学参謀が「日本は感染者を隠している」とYouTubeで叫んだのです。

反日VS従中の戦い

――日本を貶めて、効果はあるのですか?

鈴置:政権支持者の間ではあると思われます。でも、アンチ文在寅の人々には逆効果でしょう。先ほど引用した中央日報の韓国語版の記事。掲載130時間後の読者の書き込み欄を見ると、24本中22本が発言に批判的でした。

 ほとんどが「我々が大変な時に、日本の感染者数が本当はもっと多いと言いだして、それにどんな意味があるのか」「人の国よりもまず、自分の国の心配をしろ」といった、政権の論点ずらしを攻撃するものでした。

 韓国では政権が「反日」という「パンとサーカス」を投げてやれば大衆はそれに飛びつきます。でも今は新型肺炎を抑えきれるかどうかに自分の命がかかっている時です。「パンとサーカス」どころではない。さすがに韓国人も踊らされません。

 そもそも、4月15日の総選挙を前に、政権は反日を武器に票稼ぎに出るぞ、との警戒感が保守の間では広がっていたのです。

 選挙直前に日韓GSOMIA(軍事情報包括保護協定)破棄を再び宣言。この賛否を立候補者に問い、米韓関係の悪化を恐れて破棄に逡巡する保守系を「親日派」と決めつける作戦です。

 これに対し、保守派が繰り出したのが「文在寅政権は習近平主席に忖度して中国からの入国を完全に止めず、国民の生命を危険にさらしている」との従中キャンペーンです。

 朝鮮日報の「総選挙は『韓日戦』か『韓中戦』か、フレーム戦争」(2月23日、韓国語版)は保守と左派が「親日」「従中」と決めつけ合いながら総選挙を戦う構図だ、と評していました。

畳の上で死ねない歴代大統領

――それにしても、医学界の大物が「あいつは病気になればいい」と堂々と語るとは……。

鈴置:韓国はそんなものです。発言を報じた中央日報の書き込みでは、90%以上の読者がこの発言に批判的でした。が、「他人が病気になることを望む品性の低さ」を指摘する読者は皆無でした。「軽率な発言だ」との批判は1本ありましたが。

「どんな下品な言葉を使おうが、感情がすっとすればいい」「嘘だろうと相手を罵倒し、言い負かせばいい」というのがこの国の風土なのです。

 それに、政権側も必死なのです。何が何でも4月15日の総選挙に勝たなくてはいけない。もし、保守が3分の2の議席を獲得すれば、文在寅弾劾訴追案が国会を通過します。

 それを憲法裁判所が認めれば罷免が成立。次の大統領選挙で保守が勝てば文在寅氏はもちろん、現政権の中核人物は牢屋に送られる可能性が極めて高い。

 図表「韓国の歴代大統領の末路」をご覧ください。実質的な権力を持たなかった第2代と第4代の大統領は別にして、他のすべてが亡命するか、暗殺されるか、監獄に送られるか、子供が逮捕されるか、捜査の手が伸びて自殺するか――という悲惨な最期を遂げてきたのです。

 畳の上で――韓国には畳はありませんから――オンドルの上で死んだ大統領はいないのです。それに今回は人の命がかかった問題です。収賄罪で起訴された大統領でも懲役10数年の宣告が出ます。それ以上の重い判決が出ることでしょう。

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