女優「小池栄子」を育ての親「野田会長」が語る 仏様も般若も演じられる理由

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 グラビアアイドル出身者の中で、断トツの勝利者は小池栄子(39)をおいてほかにいない。現在は大泉洋(46)とダブル主演した映画「グッドバイ~嘘からはじまる人生喜劇~」がヒット中。4月からは中村倫也(33)の主演連続ドラマ「美食探偵 明智五郎」(日本テレビ)で、中村の相手役を務める。人気と好感度の目安であるCMの数もHonda、サントリーなど大手ばかり5社。成功の理由は何か?

「彼女が売れた理由は、頭も性格も良いからですよ」

 そう語るのは、芸能事務所・サンズエンタテインメント会長の野田義治氏(73)。1996年、和洋九段女子高(東京)の2年生だった小池をスカウトし、芸能界に導いた人だ。現在は小池が自分の芸能事務所を持つこともあり、会社は別だが、フランクな付き合いが続いている。

「このところ彼女の女優としての評価が高まっているようだけど、演技は最初からうまかった。それが益々うまくなっている」(野田氏)

 どうして演技が進歩したのだろう。

「スタッフや共演者に育ててもらったのでしょう。ただし、育ててもらえたのも彼女の性格が良いから。彼女は恩をずっと忘れない人だし、感謝の気持ちも失わないんです」(野田氏)

 振り返ると、小池がドラマで初めて主要キャストの一員となったのは「ナオミ」(フジテレビ、1999)。破天荒な女教師(藤原紀香、48)が主人公の学園ドラマで、小池は生徒の一人・斎藤亜矢子を演じた。

 この演技が新人クラスのものとは思えず、制作関係者の間で「小池栄子はいい」と評判になった。以降、「青い鳥症候群」(テレビ朝日、1999)「時空警察捜査一課」(日本テレビ、2002)などのドラマに、ほぼ切れ目なく出演するようになる。

 40代以上の人には今でもグラビアアイドルだったことが記憶に新しいだろう。1996年のデビューから10年ほどはグラビアで見事な肢体を披露した。特に目を引いたのはバストで、サイズは91センチ。カップはF。このため世間からは「巨乳アイドル」とも呼ばれた。

 1990年代は、前出の野田氏がやはり巨乳の佐藤江梨子(38)やMEGUMI(38)らを次々とデビューさせたこともあって、グラビアアイドル界の黄金期。その中でひときわ輝いていたのが、小池だった。

 もっとも、小池はドラマやバラエティー番組の仕事で評価を得ると、グラビアの仕事を少しずつ減らしていく。写真集は、カメラマン・篠山紀信氏(79)が撮影した2004年の『Digi+KISHIN girls 小池栄子』が最後になった。

 後に小池はバラエティー番組などで「水着の仕事は(野田氏に)騙されてやった」と繰り返し語った。もちろん、「騙された」は冗談だが、最初から水着の仕事は長くやるつもりがなかったらしい。

「僕自身、グラビアは知名度や人気を得るための手段に過ぎないと思っていましたからね」(野田氏)

 小池は最初から女優志望者だった。

「彼女には早いうちから『女優として君は仏様も般若も演じられる』と太鼓判を押しました。才能がありましたから。ただ、『女優として胸が邪魔になってしまうかな』と危惧もしていました」(野田氏)

偉ぶることがない

 だが、野田氏の不安は杞憂に終わった。小池の女優としての評価を決定付けたのは2008年の主演映画「接吻」。小池は一家3人殺害事件の犯人(豊川悦司、57)と獄中結婚する孤独なOL役を演じた。にわかには理解できない女性の複雑な心象風景を、表情で見事に表した。女優・小池の凄さの一つは、目や口元の微妙な動きだけで、内面を表現できてしまうところなのだ。

 また、古くから俳優と女優にとって一番大切なのは「声」でだと言われ、二番目が「顔」、三番目が「姿」とされるが、小池は最も重要な声と滑舌が抜群に良い。小池の声を不快に思ったり、セリフが聞き取り難いと感じたりしたことのある人はいないのではないか。

 小池は2008年、この映画「接吻」での演技により、日本屈指の権威を誇る映画賞「毎日映画コンクール」の主演女優賞を獲った。名女優の証明とも言える賞だ。2010年の寺島しのぶ(47)、2014年の安藤サクラ(34)より先に受賞した。

 にもかかわらず、態度が大きくなることはなかったし、自慢もしなかった。受賞のPRすらほとんどしていない。だから、小池が20代のうちに大きな映画賞を獲っていることを知らない人もいるだろう。

「彼女の態度はデビュー前から今に至るまで、ずっと変わりませんからね。偉ぶることがないんです」(野田氏)

 そう、性格の良さには定評がある。辛口の人物評で知られるダウンタウンの松本人志(56)ですら、小池本人が出演した今年1月10日放送のフジ「ダウンタウンなう」(金曜午後9時55分)の中で、「小池のことを嫌いという人、聞いたことがないわ」と真顔で語っている。

 そんな人間性を育んだ家庭環境はというと、父親は東京・下北沢の実業家。小池がバラエティー番組等で明かしたところによると、家業は「パチンコ屋」。経済面では何不自由なく育ったらしい。

 和洋九段女子は中高一貫校なので、中学から入った。1897年に創立した名門校であり、世界を見据えた教育を標榜している。NHKの出田奈々アナウンサー(36)もOGだ。小池の場合、野田氏のスカウトがなかったら、保育士になるつもりだった。

 高校在学中にデビューしたため、大学には進学しなかったものの、頭の良さは折り紙付き。例えば、2008年から翌09年までNHKのEテレ「テレビで中国語」(火曜午後11時30分)に生徒役で出演したところ、僅か3カ月ほどで中国人と会話が交わせるようになり、スタッフたちを驚かせた。

 2006年に始まったテレビ東京の「日経スペシャル カンブリア宮殿」(木曜午後10時)ではアシスタント役を務め続けている。ホスト役の芥川賞作家・村上龍氏(67)と一緒に、ゲストの財界人たちから本音を引き出している。これも頭が良いからこそ出来る仕事に違いない。

 昨年秋には日テレのドラマ「俺の話は長い」で生田斗真(35)と姉弟役を演じた。「2人のセリフの応酬が面白い」と評判になった。4月からは同じく日テレの「美食探偵 明智五郎」(日曜午後10時30分)に出演し、主演の中村倫也の相手役を務める。また話題になりそうだ。

 小池の役はマグダラのマリアと呼ばれる女。普通の主婦だったが、探偵の明智(中村)と出会ったことにより、心が解放されて、殺人鬼になってしまう。明智とは惹かれ合う関係でもある。4月ドラマの中では屈指の注目作である。

 小池はほかにCM契約を5社と結んでいる。いずれも大手。Honda「FREED」、サントリー 「金麦 ゴールド・ラガー」、スカパー!、ユニ・チャーム「チャームナップ」、味の素 「Cook Do きょうの大皿」「具たっぷり味噌汁」である。アラフォーではCM女王と呼んでも差し支えないだろう。

 グラビアアイドル出身者では、もちろん最大の勝ち組。女性芸能人全体の中でも突出した成功者に違いない。また、大手芸能事務所に所属せず、個人事務所で結果を出し続けているところも凄い。

 その個人事務所の代表は誰かというと、2007年に結婚した元プロレスラーの坂田亘氏(46)。5年の交際を経て結ばれた。結婚時に小池は「とにかく幸せで、生きててよかった」とのろけ、坂田氏も「最強のタッグパートナーを得た」と相好を崩していたが、その関係は今も変わらないようだ。夫婦円満も成功の理由なのだろう。

「彼女が40代になったら、さらに経験が加わり、もっと良い女優になりますよ」と、前出の野田氏は断言する。

 頭も性格も良い小池の快進撃は続きそうだ。

高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)
ライター、エディター。1990年、スポーツニッポン新聞社入社。芸能面などを取材・執筆(放送担当)。2010年退社。週刊誌契約記者を経て、2016年、毎日新聞出版社入社。「サンデー毎日」記者、編集次長を歴任し、2019年4月に退社し独立。

週刊新潮WEB取材班編集

2020年3月2日掲載

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