不動産「五輪後の暴落」は起きるのか 早めに売るべき家の特徴

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「強い土地」と「弱い土地」

 もう一つ、不動産価格が下がると噂される要因には、「生産緑地法」の存在がある。住宅地などの片隅にある農地は、これまで税制優遇などの恩恵があったが、あと2年で、この法律によって指定された土地の大半の特例措置が切れるのだ。

 特例措置がなくなれば所有者が一斉に土地を売ってマンションが乱立。それが不動産価格の下落に拍車をかけるという指摘がある。

 しかし、先の長嶋氏が言うには、

「生産緑地に指定されている土地は、東京なら端っこで駅からも遠い。対象の土地は世田谷区にもありますが、西側のエリアで駅から遠くあまり価値がないので、利便性のいい『強い土地』は影響を受けないと思います。ですから、特例措置がなくなっても『弱い土地』は弱いまま。むしろ、そういった土地にお住まいなら、法律云々にかかわらず価値は下がり続けるので、早めに売った方が得策だと思いますね」

「五輪後の暴落」が起こらずとも、「弱い土地」にある物件なら売却を急いだ方がいいというのだ。そもそも「強い土地」と「弱い土地」を分かつものとは何なのか。

 改めて長嶋氏に訊くと、

「昨今の不動産市場では、何よりもエキチカ物件が求められています。どんどん駅から距離の近い物件が人気となっていて、“徒歩7分”を超える物件は、売るのも貸すのも難しくなってきた。若年層は車を持つ人が少なくなっていますし、共働き世帯が増えたことで、通勤や買い物に利便性の高い住宅のニーズが高まっている。徒歩15分で100平米より、徒歩3分で70平米の物件の方が人気なのです」

 不動産を選ぶなら、「空間」の快適性を犠牲にしてでも「時間」が大事、という若年層が増えているそう。

 ゆえに、旧来のベッドタウンによく見られる“駅から徒歩15分”といった戸建ては需要がない。むしろ高齢化の進展で、どんどん空き家が増えることが懸念されると、長嶋氏が続ける。

「そういった一軒家の所有者である団塊の世代と比べて、若年層の年齢別人口は約半分。つまり、家を売りたいという中高年世代にしてみれば、ライバルがたくさんいるのに、買い手は少ない。『弱い土地』にある物件の価値は下がる一方なのです。それはマンションも同じで、郊外も都心も関係ない。ですから、“徒歩7分”を超える立地の物件は、経済合理性を考えれば1秒でも早く売った方がお得と言えます。子供に空き家を遺さないという『終活』の観点からも、いい選択と言えるのでは」

(2)へつづく

週刊新潮 2020年2月27日号掲載

特集「自宅を売るか否か『五輪前』の重大決断」より

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