「いきなり!ステーキ」は2年連続赤字で窮地 業績回復のヒントは“ワタミ方式”

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ワタミのV字回復とは?

 冒頭で紹介した朝日新聞の記事で、「いきなり!ステーキ」側は「春までに44店舗を閉店する」と対応策を説明している。

 しかしながら、ここ最近「いきステ」のイメージ悪化は著しい。“店のリストラ”は遅きに失した感と、対象店舗数が少ないという印象は拭えない。

 フードサービス・ジャーナリストの千葉哲幸氏は「消費者の『いきなり!ステーキ』に対する意識は、“高揚感”がなくなっています」と指摘する。

「『いきなり!ステーキ』は価格を劇的に下げることで、『毎日でもステーキが食べられます』と消費者にメリットを提示しました。おかげで快進撃を達成しましたが、消費者は次第に“満腹”になっていったのでしょう。SNSなどで『美味しくない』、『意外に高い』、『肉が固い』との声が出ていますが、これは『毎日のようにステーキを食べたいわけではない』という意思表示が根底にあると思います」

 千葉氏は「たとえはあまり良くありませんが、美女の水着写真を『セクシーだな』と気に入っても、それが街中に貼ってあったら『もう結構』と思うのと同じです」と解説する。

 1990年代、突如としてヘアヌードブームが起こったことがある。雑誌の売上は伸び、高額な写真集が飛ぶように売れていったが、数年で収束してしまった。「いきなり!ステーキ」の人気も、これに重なって見えるというのだ。

「『いきなり!ステーキ』の経営を分析すると、『できる限り牛肉を安くする』と『店舗数こそ力なり』という2つの方針が浮かび上がります。これは正直に申し上げて、昭和の遺物と言わざるを得ません。現在、日本の外食産業は多様化が進み、何でも食べられる時代になりました。しかしながら、それでも庶民にとってステーキとは、依然としてハレの日のご馳走なのです。子供が入試に合格したから食べる、ボーナスが出たから食べる、という具合です。この価値観は強固なものがあります」(同・千葉氏)

 閉店数が44店舗で終わるはずもなく、店舗数はかなり減少することが予想される。何しろ「いきなり!ステーキ」というブランドには期待感が薄まる一方だからだ。

 千葉氏は「居酒屋チェーンのワタミが業績をV字回復させた方法を見習うしかないと思います」と言う。

「2010年代にワタミはブラック企業という批判を浴び、一時は人気が低下します。13年3月期に赤字転落しましたが、18年3月期に苦節5年で黒字転換しました。その秘訣として挙げられるのが『和民』から業態転換した『ミライザカ』『三代目鳥メロ』のヒットでした。つまり『ワタミ』という負のイメージを切り捨て、店名を変えて挑戦した新業態によって復活することができたのです。『いきなり!ステーキ』はブラック企業ではありませんが、現状不採算の店を閉めて、ペッパーフードサービスの資産である牛肉を中心にした新業態に転換するべきだと思います」(同・千葉氏)

週刊新潮WEB取材班

2020年2月25日掲載

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