広島「小園海斗」、ショートでレギュラーは時期尚早 カープOBは「センターも守らせるべき」

スポーツ 野球

  • ブックマーク

Advertisement

 広島カープの将来を担う選手として、一番手にあがるのは今季で二年目を迎える小園海斗だろう。ルーキーイヤーは58試合に出場し、打率.213、4本塁打という成績を残して、同じく高卒で同期入団の中日・根尾昂、ロッテ・藤原恭大に比べて、頭ひとつ抜け出している“逸材”だ。今季はショートのレギュラーを奪取してほしい、と期待を寄せる広島ファンが少なくないが、今後の展望はどうなだろうか。

首位打者やゴールデングラブ賞など数々のタイトルを獲得した、広島OBの正田耕三氏はこう指摘する。

「ショートの開幕スタメンは(小園ではなく、長年レギュラーを務める)田中広輔でしょう。佐々岡真司監督は、田中のほうが経験もあるから、彼を使いたいと思っている。とはいえ、小園が悪いわけではありません。ショートは、数年先に小園が守っていなければならないポジションですが、まだ二年目の選手です。チームとして、守備の要で最初に固定したいポジションはショートですので、開幕から小園を育てながら使うという選択肢はないのではないか」

 田中の後継者を育成することは、広島にとって今後の大きな課題だ。田中は2016年から18年のセ・リーグ3連覇を支えた貢献者ではあるが、昨季は極度の打撃不振に陥り、精細を欠いていた。97試合の出場にとどまり、打率.193、打点27、盗塁8とプロ入り後、最低の成績になってしまったのだ。こうした状況もあって、緒方孝市監督(当時)が小園を1年目から起用していた。

 とはいえ、小園をショートのレギュラーで使うのは“時期尚早”というのは、前出の正田氏だ。

「小園はスイングが鋭く、身体もできてきて長打力がつき始めています。また、グラブ捌きもまた柔らかく、走力もある。将来の柱になるのは間違いないですが、今は経験を重ねないといけない時期にあると思います。ショートで出場に固執して、2軍でプレーしていてはいけない。どんなポジションでもいいから一軍で経験を積むことが大切です。そのためには外野やセカンドでの出場もありですし、センターでも試合に出ることがプラスになります。センターであれば、田中と菊池涼介という球界を代表する二遊間の動きを真後ろから見ることができるので、小園にとって非常に勉強になるのではないでしょうか。結果的にセンターとセカンド、ショートという3ポジションを経験しておけば、レギュラーになった際に大きな財産になると思います」

 確かに、落合博満監督時代の中日を支えた名二遊間コンビ、井端弘和と荒木雅博もまた、レギュラーに定着する前には、内野だけではなく、慣れない外野でも一軍で出場して、経験を積んでいた。同じことが小園にも通じるということだろう。

 一方で、広島を取材する野球ライターはこう分析する。

「昨シーズン、広島は3連覇中のチームとは思えない戦いぶりで、4位に沈んでクライマックスシリーズの出場すら叶わなかった。昔とは違って、ファンが望むのは目先の勝利。1年目とはいえ、佐々岡監督に求められるのは、3年計画などではありません。以前のような弱小時代なら、最優先で選手の育成に取り組めましたが、そう悠長なことも言っていられない。小園を育てることも重要ですが、やはり勝つこと優先しなければならないでしょう。そうなれば実績がある選手を優先して起用することも仕方ないでしょうね」

 球史を振り返ってみても、黄金時代が終わると、世代交代がうまくいかず転落したチームは数知れない。若手を育てながら勝つ……言うは易く行うは難し。広島はこの課題に立ち向かうのだろうか。

週刊新潮WEB取材班

2020年2月23日掲載

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。