厚底シューズで出たタイムを、厚底でないシューズで超せるのか?

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 マラソンで初めて2時間を切ったキプチョゲ、16年ぶりに日本記録を更新した設楽悠太、それをすぐさま塗り替えた大迫傑、先の箱根駅伝で区間記録を塗り替えた選手たち……彼らが履いていたのはナイキ製の“厚底シューズ”だった。

 速さの秘密は、靴底に忍ばせたカーボンプレートだというが、このシューズを“世界陸連が使用禁止にする”と英国メディアが報じたことで、上を下への大騒ぎとなっている。

 世界陸連最大のスポンサーがアシックスのため、ライバルを蹴落とす陰謀ではないかと見る向きもあるが、

「それはなさそうです。アシックスも厚底の開発に力を注いでいますから。それより今回の件は、10年ほど前に競泳で“鮫肌水着”を着た選手が記録を連発してほどなく着用を禁止されたケースを彷彿させますね」

 とスポーツ紙陸上担当記者が語る。

「厚底シューズも、“禁止”の決定が下る見込み。マラソン界は混乱必至ですが、最大の関心事は“いつから禁止になるのか”。これが混乱の度合いを大きく左右するんです」

 仮に“2月から禁止”となると、どうなるか。

「日本はマラソン選手枠男女各3枠のうち各1枠が未定。選考レースは東京マラソンなどがまだ残っています。その際、順位だけでなく設定タイムのクリアも求められますが、例えば男子の場合、それが大迫の持つ日本記録なんです。“厚底タイム”を厚底でないシューズで上回らないといけないなら、明らかに不公平。アシックスの契約を打ち切ってナイキの靴に履き替えた有力選手もいるというのに……」

 では、“東京五輪本番から禁止”ならどうか。

「内定4選手のうち3選手が厚底で、残る男子1枠も“厚底選手”になる可能性が大。彼らは厚底に合わせた独特の走法を習得しています。でも本番で“禁止”なら、走法を短期間で変えなければならない。選手たちの負担は大きく、故障や事故の恐れも出てきます」

 したがって、

「“鮫肌”が北京五輪とロンドン五輪の中間期に禁止されたのと同様、厚底も、混乱を最小限に止めるべく、2年後くらいに禁止、とアナウンスされるのでは」

 そもそも技術の進歩を敵視するのもどうかと思うが。

週刊新潮 2020年1月30日号掲載

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