上皇陛下実姉の動物園が経営難、お客さんは「動物がかわいそう」

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 池田厚子さん(88)。なにしろ、上皇陛下の実姉である。彼女が園長を務める動物園では、さぞかし動物たちも雅に暮らしているかと思えば、さにあらず。

 岡山駅の北方、タクシーで1500円弱の地にある池田動物園。岡山で池田といえば特別な響きがある。厚子さんが嫁いだ故・池田隆政氏は、岡山藩主池田家の16代当主で、動物好きが高じて牧場を始め、昭和28(1953)年にそこを動物園にした。だから「池田」の冠がつくのである。

 岡山県はもとより、近隣の鳥取、香川を合わせても、日本動物園水族館協会加盟の動物園はここだけだから、子供のためにも残すべき施設なのだろう。が、それにしては、2016年に死んだ象の獣舎が打ち捨てられたまま。柵が低いので、象が鎖に繋がれていたこともあり、どの獣舎も古くて狭い。「狭い檻をくるくる回ってるだけで、かわいそうやな」という、若い女性の声も聞こえてくる。

 広報担当者に聞くと、

「一昨年まで年間11万人前後の方に来ていただいていましたが、去年は9万8千人。毎年1千万から2千万程度の赤字が出て、累積赤字は2億4千500万円。基本的には入園料だけで賄い、ほかに『池田動物園をおうえんする会』からの寄付金や、園長からの借り入れで運営していますが、かなり厳しい」

 で、現在は、

「キリン、ライオンからウサギまで104種600の動物がいて、従業員18名中、飼育員は9名。1人で10種類以上の動物の面倒を見るのはかなり大変」

 とのこと。ちなみに大阪の天王寺動物園は、180種千の動物に対し飼育員31名だから、かなり手厚い。年間入園者数は昨年167万5千人と、こちらも比較にならない。

 忠政智登士副園長も、

「飼育のレベルは高い」

 としながら、経営難であることを隠さない。

「前園長の隆政氏が私財を投じて維持されてきたので、現園長も守っていきたいのでしょう。皇族の方々に来ていただく、などと一切漏らさないのは、藩主家系のプライドもあるのでは」

「動物がかわいそう」

 事実、この動物園こそが旧岡山藩主の“領国”。それを必死に守る池田厚子さんが気の毒にも思える。彼女の自宅も園内にあり、鎖が張られるなど獣舎さながらだが、池田動物園をおうえんする会の杉原望氏によれば、かわいそうなのは厚子さんではないようだ。

「一番大事なのは動物福祉。ここでは動物たちは、さびた狭い檻、夏は暑く冬は寒いコンクリートという環境で暮らしている。でも、本気で動物福祉を考えて環境を改善すれば、赤字は10倍に膨れ上がるでしょう。だから募金や寄付をお願いし、公営化に向けて署名活動もしていますが、市営化を求めて6万筆強の署名を市に提出しても、市長にノーと言われてしまいました」

 そして、こう結んだ。

「動物園は親と行き、大人になったら子供を連れて行き、思い出を繋ぐ場所。なのに池田動物園に来たお客さんは、ほかの動物園と比較して“動物たちがかわいそう”と感じてしまう」

 動物園の意義が、本末転倒になっているらしい。岡山市の行政関係者が言う。

「園側から公営化を求める要望書が市長に提出されましたが、“株式会社なのでまずは将来のビジョンを提出してほしい”と市長が要請し、そのままになっています。ただ、池田園長は関係者に“名前も飼育体系もそのまま、というのが望ましい”と話されているそうで、さすがに虫がよすぎるのではないでしょうか」

 園長が「退位」を拒むがゆえに動物が犠牲になっているのだとしたら……。

週刊新潮 2020年1月23日号掲載

ワイド特集「ガラスの人間動物園」より

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