上皇ご夫妻に新年一般参賀参列を「お願い」した宮内庁の「言い分」と「ジレンマ」

国内 社会 週刊新潮 2020年1月16日号掲載

  • ブックマーク

分かっていながら宮内庁「二重権威」のジレンマ(1/2)

 令和初の新年一般参賀が1月2日に行われ、天皇ご一家のお姿を求めて6万8千人余りが詰めかけた。一方で、昨年来の懸案である「二重権威」の問題は、なおも横たわったまま。が、当の宮内庁はこうした現状を“わかっていながら”止められないのだという。

 ***

 天皇皇后両陛下は2日、計5回にわたって皇居・宮殿の長和殿ベランダにお出ましになった。宮内庁担当記者が言う。

「そのうち上皇ご夫妻は午前中の3回お出になり、両陛下の右側に並んで立たれ、お手振りをなさっていました。御代替わりにあたり、上皇ご夫妻は原則として一切の公的ご活動から退かれることになりましたが、新年の一般参賀については他の皇族方も参列なさることから、宮内庁は“別枠”と位置付けてきたのです」

 当日の上皇さまは、天皇陛下のご挨拶に聞き入られながらも、ご退出の間際まで入念なお手振りで参賀者の歓声に応えられていた。一方の上皇后さまは、6月に白内障の手術を受けたこともあり、サングラスをお召しになったまま。もっぱら上皇さまに寄り添うようになさっていたのだった。

 が、遡ること数日前、12月27日に行われた西村泰彦・宮内庁長官の記者会見では、このお出ましを巡って以下のようなやり取りが交わされていた。

「記者からは、上皇ご夫妻が3回出席されることになった“経緯”について質問がありました。これに西村長官は『ご負担は大きいですが、一年の初めの行事でもあり、ご一家お揃いで出て頂いたほうがよろしいだろうと、私どもからお出ましを“お願い”し、快諾を頂いた』と答えていたのです」(前出記者)

 とはいえ、御代替わり後に両陛下と上皇ご夫妻とが公に並び立たれるのは初めてのこと。続いてこんな質問も出たというのだ。

〈現在、権威の二重性についてさまざまな議論がある。そんな中で一般参賀において四方が並ばれるわけで、この状況について宮内庁は何らか検討をしたのか〉

 これに長官は、

〈権威の二重性が問題になったのは、天皇が上皇になられた後に政治などに介入した、あるいは自身の力を行使するために位を譲ったりした時代の話。今回の御代替わりはこれに当たらず、一般参賀へのお出ましも、それによって上皇陛下が何かを実現しようとしているわけではないので、そうした批判は全く当たらない〉

 としながら、

〈国民の目から見て、30年以上にわたって天皇陛下として国民に寄り添ってこられた上皇陛下のお姿を拝見して、今上陛下と並ぶ権威だと感じる人はそんなにいないのではないか〉

 そう答え、“ご退位後もお元気な姿でお出まし頂くことが、国民の期待に応えることになる”と判断したなどと述べたのである。

 もっとも、長官はじめ上皇職の幹部らが、その一存で上皇ご夫妻に「お願い」できるはずもない。さる宮内庁関係者が明かすには、

「天皇陛下や皇族方のご意思を事前に確かめることなく、そのご活動について我々から発案するなどあり得ません。ご活動の都度、庁内では下地作りが慎重に進められていくのです。今回は、令和最初の新年一般参賀。メインはもちろん天皇皇后両陛下であり、事前に両陛下に、上皇ご夫妻のお出ましについてご内意を得ていたのは言うまでもありません。先にお耳に入れることで、上皇ご夫妻にもご出席についてお伺いがしやすくなるからです」

 そして、そもそも上皇ご夫妻にもそうした“お気持ち”があったというのだ。

「公的ご活動からは御身を退かれましたが、国民統合の象徴として30年以上お務めを果たされてきた上皇さま、そしてそのご活動を支えてこられた美智子さまは、ともに強い責任感を持ち続けてこられました。それは今も変わることなく“新年を迎えるにあたり、国民の前に姿を現すことは当然の義務である”とお考えでいらっしゃいます。そうしたご姿勢もあって、お出ましを自ら希望されたのだと拝察いたします」(同)

 宮内庁幹部らの「お願い」は、あくまで建前に過ぎないというのだ。が、そうしたお振る舞いが、結果としてさらなる懸念を生み出すおそれがあるのは、これまで報じられてきた通りである。

 昨年末、突如として宮内庁は、上皇后さまのご体調に異変が生じていたと発表。9月半ばから血の混じった嘔吐が見られ、その原因としてストレス、なかでも週刊誌の「二重権威」に関する報道がお体に障ったのではないかと、本末転倒の指摘を行ってきたのだった。

 さる皇室ジャーナリストが言う。

「御代替わり後、手を拱(こまぬ)いたまま動かない不作為を宮内庁が重ねた結果、二重権威と映りかねない状況が続いているわけです。国民に対する強い責任感とお人柄ゆえ、上皇ご夫妻のお出ましが続いているのだとしても、そうした調整は本来、役所の仕事。すべてを“素通し”にしてしまえば、やはり世間では懸念が募るばかりです」

(2)へつづく

特集「『三権の長』が『上皇ご夫妻』詣で! 分かっていながら宮内庁『二重権威』のジレンマ」より