ゴーンの「人質司法」批判は詭弁だ! 専門家が「被告人にGPS装着」の提言

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 逃亡の理由に関して、ゴーン自身は米国の代理人を通じ、〈日本の不正な司法制度の人質にはならない〉との声明を出している。

 この「人質」の意味について、甲南大学法科大学院教授(刑法)の園田寿氏が解説するには、

「日本の司法は伝統的に自白に高い証拠能力を認めるため、検察当局は被疑者・被告人が否認を続けている場合、自白を促すため保釈せずに勾留を長引かせる傾向がある。その点をさして“人質司法”と非難しているのです」

 だが、元東京地検特捜部検事の高井康行弁護士はゴーンの言い分に冷ややかだ。

「人質司法という言葉は、日弁連が使いだしたものですが、ゴーン氏は起訴後ほどなく保釈されている。人質司法をもって逃亡の正当性を訴えるのは詭弁です」

 むしろ問題だとすれば、

「結果的に保釈条件に穴があったことでしょう。例えば1泊2日の国内旅行なら、裁判所の許可なく移動できる。その最中に誰かと接触でき、行方をくらませることも可能です」(同)

 このところ裁判所が保釈を認めた被告の逃亡が全国で相次ぎ、社会問題化している折だ。やはり裁判官の罪は決して小さくあるまい。

 前出の園田氏は、保釈要件の緩和とあわせた新システムの導入を提案する。

「経済事犯などについては、起訴後に迅速な保釈を認めることと引き換えに、すでにアメリカなど諸外国が導入しているように発信機を被告人に装着すればいい。被告人が指定住居から一定距離離れると、当局に通知されるような仕組みです。そうすれば、逃亡の可能性を低減させながら、無用な長期勾留も避けられます」

 カナダ当局は米国の要請に従って中国の通信最大手ファーウェイの女性副会長を逮捕し、保釈中もGPSを装着させるなど厳然たる対応をとった。

 今回の失態で浮かび上がった司法の欠陥。日本も果断な制度改正が急務である。

週刊新潮 2020年1月16日号掲載

特集「風と共に『ゴーン』10の謎」より

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