「ゴーン擁護」が8割というフランス人の過度な自国第一主義

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 フランスのジャーナリズム誌「ル・ポワン」が大晦日に行った調査では読者の75%が大脱走を支持。かのフィガロ紙の調査にも80%超が「逃亡は正しい」と回答。年末でシャンペンをポンポンと空けすぎていたのか?

 仏閣僚のひとりは、

「司法の裁きから逃げるべきではない」

 と彼の行動を論難したものの、市民感覚ではそうならないのが仏人の精神だと、ジャーナリストの徳岡孝夫氏は解説する。

「第2次大戦時、一斉に降伏した日本人とは違い、仏人はナチスに占領された後もレジスタンス活動を継続した。自由を何より尊重する『リベルテ』の精神に拠るものです」

 自由は自分で掴み取るもの。その思想の発露が法を曲げてゴーンに海を渡らせたというわけか。かの地への留学経験もある精神科医の片田珠美氏に分析を請うと、

「移民でありながら、グランゼコール(フランスのエリート養成校)を卒業し、国を代表する企業のCEOになった叩き上げのゴーン。階級意識が根深いあの国では、嫉妬から彼を蔑む向きがあります。しかし、それとは裏腹の“彼を応援したい”感情もある。自国第一主義も強い仏人としては、『世界の中心=フランス』を代表する企業『ルノー』を長年率いてきた人物が、他国で囚われの身のままだというのは我慢ならなかったのです」

 現地在住のジャーナリストに聞いてみると、

「フランスは日本以上に階級社会が成立しているので、新聞は一部のエリート層しか読みません。今回、世論調査を行ったフィガロ紙も格調高い文体が特徴です。選ばれた人間への単純なアンケート結果を基に、それが『世論』だと主張するところが如何にも、フランスらしいですよね」

 英国に倣って住民投票でもすればエスプリの効きすぎは修正できた?

週刊新潮 2020年1月16日号掲載

特集「風と共に『ゴーン』10の謎」より

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