GL敗退の屈辱、疑問だらけの森保采配に解任の声と国内組の限界、だから言わんこっちゃない

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森保監督の采配にも疑問

 日本代表は2試合を4失点して敗北したが、このうち3失点はいずれも選手個人のミスによるものだ。U-23と同年代であるはずなのだが、中東勢の選手がしたたかだったのに比べ、代表国内組であるJリーガーたちはプレーが正直すぎたというのが率直な印象である。

 チーム戦術も、首を傾げざるを得ない場面が目立った。端的だったのがシリア戦で決められた決勝点だ。3BKの岡崎慎や町田浩樹までシリアゴールに迫りながら、日本は意図の感じられないショートパスをつなぐだけで、クロスを入れるでもなくシュートも打たない。

 これでは、ボールを失ったらカウンターをして下さい、と言わんばかりだと懸念していた。すると案の定、後半43分、交代出場のダリ(23)に、スピードに乗ったドリブルで独走を許し、最後はGK大迫と1対1から決勝点を決められた。

 ちなみにダリは、初戦のカタール戦でも交代出場すると、後半アディショナルタイムの+9分に2-2の同点ゴールを決めている。

 森保監督の采配で、最も疑問に感じたのはラスト2分でパワープレーを選択しなかったことだ。

 日本対シリア戦の前に行われたサウジ対カタール戦は0-0のドローに終わった。その結果、サウジは勝点4の1位、カタールは勝点2の2位。最下位の日本としては、引き分けでも最終戦のカタールに勝てばグループリーグを2位で通過できる。

 しかし、できれば勝点3を奪って2位に浮上したいところ。このため、残り2分で選択すべきはパワープレーだったはずだ。

 おまけに前線には182センチの上田綺世(21)[鹿島アントラーズ]と181センチの田川亨介(20)[FC東京]に加え、190センチの町田浩樹、191センチの立田悠悟(21)[清水エスパルス]もいる。彼らをペナルティエリア内に入れてクロスを放り込む。

 例えヘディングシュートが決まらなくても、こぼれ球要員として旗手怜央(22)[川崎フロンターレ]や相馬勇紀(22)[名古屋グランパス]もいる。どうしてパワープレーを選択しなかったのか、理解に苦しむところである。

■森保監督への逆風が強まるのは確実

 森保一監督は、必ずと言っていいほど、選手の「対応力」を口にする。そこで気になったのは、後半10分、左CKで上田綺世との接触プレーからGKガンナム(22)が右手を負傷した。その後、ガンナムはゴールキックをミスするなど動揺が感じられた。

 それなら遠目からでもシュートを放ち、GKに揺さぶりをかけるかと思ったが、日本はそれまでのようにパスをつなぐだけで、戦い方に変化はなかった。

 ここらあたり、ポゼッションを優先するJ1リーグという“日常”に慣れ、相手の状況に応じてプレーを選択するずる賢さが、国内組の五輪世代には欠けていると感じられた。

 そして森保監督である。すでに指摘したように、勝点3を奪うなら試合終盤はパワープレーを指示すべきである。それがセオリーだからだ。しかしベンチは動こうとしなかった。

 これはサウジ戦でも感じたことだが、森保監督はあえて動かず、選手の「対応力」をテストしていたのではないだろうか。言葉は悪いが、今大会は国内組の選手を「突き放した」印象が強い。

 その結果、明らかになったのは、国内組の“対応力”には限界があるということだ。

 2試合とも試合開始と終了間際という“一番気をつけなければならない時間帯”に簡単に失点してしまう“学習力”の欠如。そして時間帯に応じて臨機応変にチームプレーの選択を指示できる“リーダーの不在”である。

 シリア戦後の森保監督は、「東京五輪での金メダルには頼りない2試合だった。チーム作りのアプローチを変化させるのか」という質問に対して次のように答えた。

「東京五輪の金メダルに向けて不甲斐ない結果。最終的にどの選手が五輪の舞台に立ってプレーするかという部分ではラージグループを見ているので、この大会に参加した選手、ヨーロッパや日本に同等の力を持つ選手がいること、残りの時間で力を見極めて、この年代の最強のチームを作るとともに、オーバーエイジを含めてどうすればチームを強くできるか、結果を残せるかを考えていきたい」

 東京五輪までの強化プランのアウトラインを明かしたわけだ。森保監督が正直な人物であるのは間違いない。しかし、言葉足らずのところもあるというのが、率直な感想だ。あまり多くを語らず、記者会見ではいつも同じようなフレーズが並ぶため、会見時間も短い。

 ブレがないと言えば聞こえはいいが、時として受け取るほうは「ワンパターン」であり、この日のように「勝負勘を養ってほしい」といった選手に成長を促すコメントは、「責任転嫁」とも受け取られかねない。

 もしも選手の「対応力」を試していたとしても、2014年に始まったU-23アジア選手権で初のグループリーグ敗退。それも2連敗という結果はダメージが大きい。逆風が吹くのは目に見えている。

六川亨(ろくかわ・とおる)
1957年、東京都生まれ。法政大学卒。「サッカーダイジェスト」の記者・編集長としてW杯、EURO、南米選手権などを取材。その後「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。

週刊新潮WEB取材班編集

2020年1月14日掲載

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