楽天、監督は更迭、生え抜き2人は移籍… 2020年の注目は「古巣との因縁対決」

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再出発の2020年

 25年ぶりの完全試合がもう少しで実現するところだったのが、7月19日のソフトバンク戦(楽天生命パーク宮城)だ。楽天の先発・美馬学は、最速146キロの直球と低めに決まる変化球のコンビネーションで、ソフトバンク打線を8回までパーフェクト。1994年5月18日の槙原寛己(巨人)以来の完全試合まで「あと3人」となった。もし達成すれば、1950年にプロ野球史上初の完全試合を達成した藤本英雄(巨人)の32歳1カ月を更新する32歳10カ月の史上最年長記録にもなる。

「(記録を)意識して」9回のマウンドに上がった美馬だったが、先頭の明石健志にフルカウントから痛恨の四球を許し、記録ストップ。さらに代打・栗原陵矢に左前に初安打を許したあと、2死から上林誠知に右越え三塁打され、完封まで逃してしまった。

 2安打1四球1失点の完投勝利を収めた美馬は「(パーフェクトを)やっちゃうんじゃないかと思っていたんですけどね。惜しかったです」と残念そう。

 楽天にとっては、2014年7月15日のオリックス戦で、辛島航、福山博之の継投で試合開始から8回2死まで無安打に抑えた最長記録を1/3イニング上回る新記録だったが、シーズン後、美馬はこの記録を置き土産にロッテにFA移籍し、9年間在籍したチームを去った。

 1回表裏だけで1時間を超えるノーガードの打ち合いが演じられたのが、6月22日のDeNA戦(横浜)だ。1回表、楽天は茂木栄五郎、島内宏明の連続二塁打で1点を先制したあと、ブラッシュの左翼線二塁打、ウィーラーの右前タイムリーなどで6対0と突き放した。

 ところが、その裏、DeNAも打者12人の猛攻で7対6と一気にひっくり返す。両チームが初回に6点以上を取り合ったのは、1989年10月7日にヤクルトが8点、中日が6点を取って以来30年ぶりの珍事だった。

 楽天は8対9の7回に山下斐紹の左越え2ランで逆転すると、8回に1点を加え、4時間7分の大乱打戦を制した。平石監督は「初回に6点取って負けたらダメでしょ」と苦笑したが、この勝利で39勝29敗の貯金10とし、2位・ソフトバンクに1.5ゲーム差の首位をキープ。5月15日の日本ハム戦(楽天生命パーク宮城)では、球団史上初の8点差逆転勝ちを収めるなど、この時期のチームには神がかり的な勢いがあった。

 7月以降失速し、最終順位こそ3位に終わったものの、CSファーストステージ初戦でソフトバンクに先勝するなど、監督1年目としては大健闘と言える成績だったのに、待っていたのは、2020年から新設される「2軍統括」への配置転換という“降格人事”だった。

 このポストを断り、楽天の第1期生として15年間在籍したチームを去った平石前監督は、その後、3年連続日本一を達成したソフトバンクの1軍打撃兼野手総合コーチに迎えられた。

 相次いで楽天を去った指揮官と2人のベテランが、それぞれの立場は違うものの、他球団で再出発する2020年。古巣との因縁対決も注目される。

久保田龍雄(くぼた・たつお)
1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新刊は電子書籍「プロ野球B級ニュース事件簿2019」上・下巻(野球文明叢書)

週刊新潮WEB取材班編集

2020年1月6日掲載

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