医者や医療従事者が「ジェネリック薬」を飲まないこれだけの理由

ライフ 週刊新潮 2019年12月26日号掲載

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医者が飲まない「ジェネリック薬」(1/2)

 まったく一緒であるなら安いほうがいい。厚労省が、来年には薬全体の80%を占めるまでに増やす、としているジェネリック医薬品も、オリジナルと同じなら財布にやさしくて嬉しいかぎりである。しかし、医者は飲まない、その根拠もある、と聞かされると――。

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 懐にやさしいのは、だれにとっても嬉しいことだが、さりとて安かろう、悪かろうでは困る。その点でジェネリック医薬品(後発医薬品)は理想的な存在のように見えないか。「新薬(先発医薬品)と有効成分が同じで、同じ効き目をもつ」と宣伝されているのが本当なら、価格が新薬の7割から、安いものは2割ほどというジェネリックは、ありがたいというほかない。

 日本の医薬品に占めるジェネリックの割合は、昨年9月の調査で72・6%。来年9月までに、これを80%にすべく、現在、厚生労働省が音頭をとっている。

 さるジェネリックの製薬会社のCMで流れる、「なによりも患者さんのために」というフレーズ通りに、患者ファーストの施策ということだろうか。だが、総合内科専門医である秋津医院の秋津壽男院長は、

「ジェネリックの普及を国が推し進めているのは、保険財政の破綻を防ぐためであって、患者の健康を考えてやっていることではありません。あくまでも財政ファーストで、患者ファーストではないのです」

 と、きっぱり。それでも結果的に、患者のためになればいいわけだが。ジェネリックとはなんであるのか、保険財政の事情とからめて確認しておきたい。

 厚労省のHPには、

〈後発医薬品(ジェネリック医薬品)は、先発医薬品と治療学的に同等であるものとして製造販売が承認され、一般的に研究開発に要する費用が低く抑えられることから、先発医薬品に比べて薬価が安くなっています。後発医薬品を普及させることは、患者負担の軽減や医療保険財政の改善に資するものです〉

 と書かれている。これを厚労省担当記者に、少しかみ砕いてもらおう。

「新薬は研究開発に始まって発売されるまでに、10年、15年とかかり、数百億円の投資が必要です。だからその分を回収するために、特許を出願したら20~25年は、開発した会社が独占的に製造、販売できます。でも特許期間が終われば、ほかの製薬会社が、同じ有効成分の薬を作って売ることができます。これがジェネリックで、研究期間が3~5年ほどですみ、開発費が格段に抑えられるので、価格も安くできるのです」

 一方、医療保険財政云々というのは、実際、のっぴきならぬ問題である。

「2018年度に医療機関に支払われた医療費総額は42兆6千億円で、そのうち約2割は薬剤費。40年には67兆円になるという予測もあって、国家が破綻しかねないほどです。個々の健康保険組合も6割超が赤字で、薬価を抑えなければ、われわれの生命を支える国民皆保険制度さえ、ひっくり返ってしまいかねない状況だといえます」

 医療保険財政が、患者が医療を受けられなくなるほどの危機にあるのなら、「財政ファースト」も致し方あるまい。いずれにせよ、「同じ」薬が安くなるなら、歓迎しない理由はなかろう。

 医薬情報研究所SICの医薬情報部門の責任者、薬剤師の堀美智子さんも、

「医療費を削減するうえで、ジェネリックの活用はとても大切です」

 と言う。ただし、こう付け加えるのである。

「だからこそ正しい知識を持ってほしいです。日本ではジェネリックは“先発薬と同じです”という紹介をされ続けているせいで、なかなか正しい知識が広まりません」

「同じ」が間違いとは、どういうことだろうか。

「ジェネリックは先発薬とくらべて、主成分となる原薬は同じですが、製造方法や添加物は異なります。ハンバーグにたとえれば、肉は同じでもつなぎやこね方は異なるということ。そのうえ原薬についても、混雑物が含まれて、安全性が疑わしい場合があります。原薬に発がん性物質が含まれている、という問題が発生することもあります」

 聞き捨てならない話である。まずは現場の医師の声に耳を傾けることにしたい。

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