グレタさん“皮肉”で賛否の野口健氏 本人が語る“私が本当に伝えたかったこと”

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飛行機を使わないのは子供の発想

「Twitterという限られた字数の中で、あんな風に呟いたことで誤解を生んでしまったようです。確かに皮肉って呟いたのも事実です。『大人気ない』との指摘もありました。確かに大人気ない部分もあったのかな~と感じますが、しかし、僕はあれだけ世界で活動されているグレタさんを、いち子供だとは思っていません」

 と語るのは、野口氏。

「彼女は公共交通機関である飛行機を拒否し、ヨットで大西洋を渡ったわけですから、もう車にも乗らないだろうし、極力、動力による交通手段を好まないのだろうと想像していたのです。環境系の団体の中には、環境原理主義的思想を持っている場合が少なくなく、環境を破壊するものはすべて否定する。彼女もそういう思想の持ち主かと感じていたのも事実です」

 環境問題を考えるとき、バランス感覚が大事だという。例えば、

 野口氏は2003年から毎年、環境学校を開催している。自然体験をすることで、環境について学び、環境活動に取り組む人材を育てるのが目的だ。そこでもかつてこんなことがあった。

「小笠原でも何度か環境学校を開きました。参加者は小学生から大学生までですが、“小笠原に飛行場は必要か”を議論させたのです。東京都は飛行場を作らないという立場で、小笠原村の人たちは飛行場を欲しがっていました。小笠原行の船の中で子供たちは、環境問題の立場から、みな飛行場建設には反対していました。ところが、島で生活を始めて1週間も経つと、意見が少しずつ変わってきた。村人と触れ合うことで飛行場の必要性を理解し、最終的には子供たちの半数近くが賛成の立場に変わりました」

 現実を直視し、討論することの大切さを理解する必要があるという。

「環境を守るために飛行機をなくすというのは、現実的な話ではありません。あまりに短絡的です。環境擁護というイメージだけが先行している。11月にイギリスのロックバンドが環境保護のために飛行機に乗らないという報道があり、小泉進次郎環境大臣がそれに共鳴していたので、Twitterで『「環境問題で飛行機使わない」というのはファッションというか子供の発想』と投稿しました。恐らくそのロックバンドは、グレタさんの影響を受けたのかもしれません」

 環境問題活動家がよく陥るのは、ストイックになり過ぎることだという。

「環境への強い情熱を持つにつれて、自分の考えこそが正義であり、それ以外の考えを持つ人は敵と見なしてしまう。自分の正義イコール社会の正義と思い込み過ぎると視野が狭くなって、最後は一点しか見えなくなる。グレタさんも、その傾向にあるような気がします。過激な言葉でスピーチをすればインパクトもあり、注目もされるでしょう。しかし、その手法がいつまでも通用するものでもありませんし、時に反感も買うでしょう。共感を得られなければ、活動の輪は広がりません」

 野口氏自身も若い頃は、まわりが見えなかった時期があったという。

「僕も20代の頃、富士山のゴミ問題について、ずいぶん過激なことを言ったものです。『なにが観光、観光だ、富士山を食い物にしているだけだ』などと発言し、地元の人から嫌われたこともありました。それが活動を続けるうちに、山小屋の経営者など、彼らの立場になって考えることができるようになった。環境と観光を両立させなければ、活動は広がらないと気づいたのです。環境問題を考える上で必要なのは、リアリティです」

 2014年に17歳でノーベル平和賞を受賞した、パキスタンのマララ・ユフスザイさん(22)についてもこう言う。

「彼女は銃撃されて死にかけたのに、講演では感情を露わにする姿をあまり見たことがありません。すごく温かい言葉で喋り続けています。それが伝わって共感する人が増えているのではないでしょうか。グレタさんの場合は、これは私の個人的な推測ですが、彼女のバックに彼女を利用しようという大人がいるような気がしてなりません。すごく匂うのです。彼女のスピーチは迫力があって、影響力があります。だから子供扱いすべきではありませんし、おかしいと感じる部分があれば、はっきりと言ったほうがいいのではないかと思います。子供なのだから意見をしづらいという空気があるとするのならば、それはよくないです」

週刊新潮WEB取材班

2019年12月18日掲載

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