「良い不倫」で彼の性格が丸くなり、家庭まで円満になった話

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結婚願望を萎えさせた周囲の圧

祥子さん:私がこの年齢で彼と付き合えたのはラッキーでしたね。もう少し若かったら、人にどう思われるかが気になって、今みたいな身体だけの関係は耐えられなかったでしょうから。

二村:彼の家庭に、少なくとも目に見える迷惑はかけてない、むしろ彼の状態とか人柄も改善されてるんだとしたら、それで祥子さんの自己肯定感もまた上がる。

祥子さん:彼、二人になると私のこと女としてめちゃめちゃ褒めてくれるんですよ。ああ上手だな、さすが女好きだなって感じなんですけど、ほんとに嬉しいです。で、そこまで詳しくは聞いてないですけど家で奥さんにも優しくなったんだとしたら、いいこと尽くめじゃないですか。でも「彼と結婚したい」って思ってる若い子が同じことやられたら、本気になっちゃって苦しいだろうな、だから彼と付き合ったナースは、つらかっただろうな、とも思いますね。

二村:ただ、最初は自分に結婚願望がないと思い込んでいても、妻帯者を好きになっちゃって関係が深まるとそれが湧いてきてしまう不幸な独身の女性は、多いんですよね。

祥子さん:私は今のところ大丈夫です。彼と二人で会ってるのも楽しいですけど、自宅で一人で猫と過ごしてる時間も本当に幸せです。これは奥さんに申し訳ないんですけど、生活まで一緒にしたら妻として彼の面倒を見なきゃならなくなるなんて本当に嫌で、関係の発展とかむしろいらないです(笑)。

二村:周りからは言われませんか? 「結婚しないの?」とか「不倫なんか卒業して幸せになりなよ」とか。

祥子さん:言われますよ。余計なお世話だバカ、って感じですけどね。

二村:まったくもってその通りですね(笑)。

祥子さん:まあいちいち喧嘩してもいられないので、「そうだよねー」って適当に言って流してます。下手に反論して、図星と思われるのもしゃくなので。

二村:それを言ってくるのは誰? 既婚者ですか。

祥子さん:みんな言ってきます。既婚の上司も先輩も、同世代の友達も男女問わず。なんならゲイも。言わないのは離婚した女友達くらいですね(笑)。

二村:ゲイのお友達がそんなこと言うの?

祥子さん:私ときどき新宿二丁目に飲みに行くんですが、そこのお店の子でしたね。言われた時は私もびっくりしました。お説教されたくてゲイバーに行く女性も多いし、だからそういうトークが営業のテンプレだっていうのも分かるんです。ただ、結婚しなくても幸せでいられる場合があることは、あなたたちこそ分かってるでしょう? って気もするんですけどね。あとは「僕たちは結婚することがなかなか社会的に認めてもらえないけど、あんたはせっかくできるんだから、しなさいよ」って気持ちも、多少はあるのかなと思います。

二村:親や親戚ならまだしも、客商売の人までがそんなことを言うのは、いかに古い価値観を植え付けられているかってことだよね。

祥子さん:こっちも「相談」したわけじゃなくて、自分の状況を訊かれたから言っただけなんですけどね。もちろんそんなこと言う子ばっかりじゃないし、二丁目の雰囲気は変わらず好きなんで、別のお店に行くようになりました。

二村:不倫という名称で判断して、当事者だけにしかわからない関係を勝手にジャッジしないでほしいよね。

祥子さん:婚活してた頃に私が煮え切らなかった時も、周囲からいろいろ言われました。「何回もずるずるデートだけして、後で切られたらどうすんの。早く決めなさい」とか「結婚は女が男の尻を叩かなきゃ進まないよ」とか。だんだん、結婚に踏み切れない自分や相手より、うるさい外野のほうに腹が立ってきちゃった。はっきり言って逆効果なんですよ。ああだこうだと言われれば言われるほど、こっちの気持ちはどんどん萎えて、考えたくなくなるから。

二村:僕はね、さっき祥子さんが「もし彼と別れることになっても、私はもう大丈夫」と言ったことにわりと感動したんですよ。だって、彼に“セックスはいいものだ”と教えてもらったことで、「私はこの人じゃなきゃダメだ」と彼に依存してしまう可能性も十分あったわけだから。でもあなたは自己受容感を得たことで、自分ひとりでも大丈夫になれた。これはすごいことですよ。

祥子さん:男女の関係なんて、いつどうなるかわからないですから。そもそも私たちは不倫で、私が奥さんから彼を一時的にせよ奪っているのだから、嫉妬したり執着すること自体おこがましいと思いますし。あと、これも中川と付き合って初めて分かったことですけど、恋愛感情と性の欲望って、もちろん重なる部分も大きいけど、けっこう別のものなんだなって。

二村:そう、得られるものがそれぞれ違う。相手を好きかどうかと、身体が気持ちいいかどうかは、すごく関係あるけど、ない時もある。そこをモラルで密接に結びつけ過ぎてしまうと、夜の営みが義務になり、してくれない相手がおかしいと責めたり、気持ちよくなかった時にこんな自分はおかしいと自罰的になってしまう。愛と性は、少しは切り離しておく方が、かえって相手を愛せるものなんですよ。

祥子さん:今までは恋愛の先にセックスがあるって思っていたけど、そうじゃないんですよね。それがわかっただけで本当にラクになって……。やっぱり私は今の状態が一番幸せです。きっと何回言っても、周りは納得してくれないと思いますけどね。

 

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