「良い不倫」で彼の性格が丸くなり、家庭まで円満になった話

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「悪い不倫」ももちろんある

――良い性の営みをすることで、自分も相手も、さらには相手の家庭まで良い状態になっちゃうことが稀にある。僕はこれを「良い不倫」と呼んでいて、今回の祥子さんたちのケースはまさにこれだ。

 不倫に良いも悪いもあるもんかと言われそうだけど、「悪い不倫」ももちろんあるし、ていうか世の中の不倫はだいたい悪い。代表例は、若い未婚女性と、女性より金も立場もある既婚男性という組み合わせだろう。何に悪いのかというと、女性の精神状態に悪い。そして多くの場合、やがて精神状態が悪くなった女性が男性に離婚を迫ることになる。あるいは口には出さないけれど、関係を続けながらずっと暗い被害者意識をもち続ける。その結果、女も男も楽しい恋愛ではなくなっていく。それは、彼女の中に根源的な男性への怒りがあるからだ。

 彼女たちは、たまたま恋におちた不倫相手が奥さんと別れてくれないから怒ってるんじゃない。最初から意識の底に「満たされないもの」を抱えていて、それを存分にぶつけられる相手を選んでいるだけなのだ。だから自分とは絶対に結婚しない男を選んで本気になり、憎む。「どうせ男なんか」と言ってるわりに必要以上に男性を求める人、あなたのまわりにもいるでしょう?

 しかし僕は、そういう不倫を糾弾したり根絶させたいと思っているわけでもない(力関係が不均衡な恋愛で女性の方が不幸になることが多い、という社会的な風土は変わってほしいと思うけれど)。その不倫が「良い不倫」なのか「悪い不倫」なのか、二人の間にある精神的な真実が第三者に判断がつくわけないからだ。

 僕はいつも、世間の不倫バッシングに対して強烈な違和感を感じている。無関係の人間に、いったい何が分かるんだい? と逆に聞きたくなってしまう。他人の人生に土足で踏み込んでまでして、自分の中のモラルや価値観を守ろうとすることほど醜いものはない。ほっとけよ。

二村ヒトシ(にむら・ひとし)
1964年生まれ。慶應義塾大学中退。本業はインターネットで検索してみてください。著書に『すべてはモテるためである』『なぜあなたは「愛してくれない人」を好きになるのか』『あなたの恋がでてくる映画』、共著に『欲望会議』『オトコのカラダはキモチいい』ほか。

構成・文/山崎恵

2019年12月17日掲載

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