Facebookが「メディアに記事使用料を払う」と表明した思惑

ビジネス 週刊新潮 2019年11月28日号掲載

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メディアに記事使用料という「フェイスブック」の思惑(1/2)

 時価総額は4社で300兆円強。巨大IT企業GAFAは、巨利を貪りながら著作権への配慮がゼロ――だったところに、フェイスブックがメディアに記事使用料を支払うと表明した。

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 わけてもインターネットが普及してから育った若い世代には、情報は無料で入手するものだと思い込んでいる人が多い。無料のニュースをマメに確認していれば、いま世の中で起きていることを知るうえで十分だ、という発想らしいが、そう考える人が増えるのに反比例して、新聞や雑誌、テレビなど既存メディアの調査報道は弱体化してきた。

 理由は簡単である。インターネット上で無料で読める新聞や雑誌の記事も、元を辿れば、メディアが相応の費用と労力を投じて取材した賜物だ。しかし、タダで読まれるばかりでは、取材費を投じる体力が奪われて、メディアは良質な記事を提供できなくなる。こうなると、民主主義の根幹である「知る権利」さえ奪われかねない。

 こんな状況を加速しているのが「GAFA」と総称されるアメリカの巨大IT企業である。グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾンの頭文字をとったもので、彼らは「プラットフォーマー」と呼ばれる。ネット上で多くの人がモノやサービスのやりとりをするための基盤、すなわちプラットフォームを提供していることから、そう呼ばれているが、この4社はいまや途轍もなく巨大である。

 なにしろ2018年度の時価総額の世界ランキングは、1位がアップルの96兆円、2位がグーグルの82兆円、3位がアマゾンの78兆円、そして、6位がフェイスブックの56兆円。もはや世界そのものを支配せんばかりの勢いで、「ガーファファファッ!」という高笑いが聞こえてきそうだ。

 この4社、いずれもアメリカ企業だが、では、これら巨大プラットフォーマーが席巻するようになった後、たとえばアメリカの新聞業界はどうなったか。元朝日新聞記者で桜美林大学教授の平和博氏に尋ねると、

「報道機関の編集部門の労働人口は、08年の11万4千人が、17年には8万8千人にまで落ち込みました。テレビは横ばいでネットメディアはほぼ倍増ですが、それ以外は軒並み人員を削減しています。特に編集部門は、08年の7万1千人が、17年には3万9千人と、半分近くにまで削り込まれました」

 とのこと。業界再編の動きも活発で、

「今年8月には発行部数全米2位の新聞チェーン、ゲートハウスが全米最大のガネットを買収。1月にはAOL、ヤフー、ハフポストを擁するベライゾン・メディアもスタッフの7%、約750名のリストラを進め、バズフィードも200人規模のリストラを表明。マイアミ・ヘラルドなどを擁する大手新聞チェーン、マクラッチーも400人の勧奨退職を募集しました」

 もっとも、メディア側が手をこまねいているわけではない。国際ジャーナリストの山田敏弘氏が言う。

「ロイターなどの通信社の速報や記事のさわりは無料で公開していますが、より詳しい内容を知るには、利用者がお金を払わなければならないシステムになっています。アメリカの週刊誌や新聞は日本にくらべ、解説記事や深掘りした記事が多いのですが、それでもネットの速報性に負けてしまうので、ネットを主戦場にしつつ、じっくり読む記事に課金して収益を上げる方向に替わっています」

 たとえば、ヤフーニュースなどに流れてくる記事も、日本ではほとんどを無料で読めるが、

「アメリカのヤフーニュースでは、たとえば、テレビの地方局や地方紙が“ニューヨーク・タイムズがこう報じた”と概要を説明することはあっても、元の記事をしっかり読みたければ、料金が必要です」

 しかしながら、平氏が補って言うには、

「課金が上手くいっているのは、ウォール・ストリート・ジャーナル、ニューヨーク・タイムズ、フィナンシャル・タイムズぐらいで、ローカル紙で上手くいっているところは、ほとんどありません」

 むろん、こうした状況は日本を含め、世界の先進国にほぼ共通している。ニュース記事に限らず、画像や映像、音楽なども同様だが、巨大プラットフォーマーによって無断で掲載されてしまうと、多少課金したくらいでは、損失を取り戻せるものではない。

 そこに10月25日、極めつきの正論が、アメリカで表明された。いわく、

「インターネットがニュース業界のビジネスモデルに破壊的な影響を与えたのは、周知の通り。すべてのプラットフォーマーはニュースに資金を提供し、協力関係をつくる責任がある」

 発言者はフェイスブック(FB)の最高経営責任者(CEO)、マーク・ザッカーバーグ氏だったのである。

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