少年野球「背が低い」「早生まれ」の選手は本当に不利なのか

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少年野球に不在の「機会均等」の考え方

 さらに勝亦さんは言う。「少年野球では、スポーツ参加における『機会均等』を実現できていないことが多いですね」

「機会均等」とは、野球では聞きなれない言葉である。何か教育的な響きがあるが……。

「大人が子どもに関わる以上、教育的な観点は欠かすことができないと思います」と勝亦さん。

 少年野球が属する「スポーツ少年団」は青少年の健全育成を理念に掲げている。育成だから、現時点のパフォーマンスや結果で評価や判断するだけでは、その理念にそぐわないわけだ。

「少年野球では、大人が子どもたちの現状だけを評価して、選別しがちです。これは大きな問題じゃないかなと思っています」(勝亦さん)

“パパコーチ”として見る限り、指導者は半レギュラーに厳しい。練習では外野守備につき、試合になると、ちょっと捕球や送球でミスすれば次打席は代打を送られる。そんな光景も珍しくない。

 しかし勝亦さんは「プロじゃないんですから」とそうした手法には否定的である。

「ある程度、たとえば身体ができあがってきた高校生くらいだったら、そうした競争環境に置くことも良いかもしれません。でも少年野球はそういう段階ではないはずです」

 勝利至上主義を徹底するなら4〜6月生まれでチームを編成するのが良さそうだが、それは育成ではない。

「指導で大事なのは第一に安全です。これは肘の故障のような慢性的なケガ、バットなどの道具によるケガを含めて予防すること。次に『機会の均等』です。そして技術力向上、最後に勝利であるべきでしょう。ただ、現状は勝利が最優先になっている印象があります」

 あるとき勝亦さんは、子ども向けの野球のイベントで、参加した子どもたちに自分たちでポジション、打順を決めさせて試合を実施した。機会均等の実現だ。イベント終了後、子どもたちが答えたアンケートでは「いつもの(所属する少年チームでの)野球より楽しかった」という回答が多数だったらしい。

 悲しい話ではないか。

「普段は外野を“やらされ”ている子がショートに入ったら、いつもとは違う面白さを感じられるかもしれないし、もし希望して守ってエラーしたら、悔しくて自分でもっと練習するかもしれません」(勝亦さん)

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