少年野球「背が低い」「早生まれ」の選手は本当に不利なのか

池谷玄 少年野球の現場で悩む父親ライターの正直な報告 ライフ 2019年11月30日掲載

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 人づてに聞いたのだが、こんなふうに言う少年野球指導者がいるらしい。

「○□は背が低いから、投手はまだ無理だな」

「背が低い」と言われて喜ぶ子どもはいないはずだし、身長を理由にポジションを判断する指導者には違和感を覚える“パパコーチ”である(「“食トレ”しろ!」と喝を入れたい人は「食トレ 間違い」で検索してみてほしい)。

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「背が低いから投手は無理」という指導者と早生まれの不利

「背が伸びると野球のパフォーマンスは向上します。たとえばボールの速度は身長が1センチ伸びると約1km/h上がることが研究でわかっています」

 勝亦陽一さん(東京農業大学応用生物科学部准教授)は、身長で判断する指導者への違和感を呈する筆者に、そう言うのだった。勝亦さんは野球における身長とパフォーマンスの関係に関する研究などに取り組んでいる。

 しかし、「低身長だから選手としての能力が低い、将来性がない」などと判断してほしくないというのが勝亦さんの考えである。

 なぜなら将来、身長は伸びるからである(当たり前だが)。

「でも少年野球の指導者は、背が低い子を投手・捕手のような主要なポジションにはつけずに、内野なら二塁手、あるいは外野に回しがちです。少年野球の選手800人ほどを対象にデータを取ったところ、投手の大半が4〜6月生まれでした。また生まれ月を基準に、3カ月ごとに区切って野球選手の割合を出すと、小学生ではだいたい25%ずつですが、これが高校生になると、4〜6月生まれの割合が多くなっていました」

 というと……。

「成長の面で有利な4〜6月生まれの選手が野球に残り、反対に早生まれの選手が少なくなってる。つまり野球から離れている可能性があります」

 成長が早い4〜6月生まれは、野球でも先んじて結果を出せる立場にある。練習で「おお、うまいな!」と言われ、試合にドシドシ出場していけば、自己肯定感や自己効力感を得て、ますます野球好きになって、上達もして、やがては甲子園に出るくらいに……。

「甲子園に出場するレベルの強豪校になると、4〜6月生まれの選手の割合がより多くなっていました」と勝亦さん。

 早生まれで身長の伸びが遅い子にとって野球はむずかしいスポーツなのだろうか。

「『ウチの子は、背が小さいから試合に出られない』と悩んでいるお母さんたちがいます。土日、ずっと子どもの練習の手伝いをして、往復2時間運転して試合会場まで連れて行ったのに、わが子は出場できないとか、そんなこともあると聞きます」

 そんな悩める親、そして子どもたちのために講演で話すという。「早生まれの子に挙手してもらってから言うんです。『生まれた時期が違えば身長に差があって当たり前だよ。きっと大きくなるから。コツコツ続けていたら逆転できる可能性があるよ』って。みんな、目を輝かせますね」

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