住民票の旧姓併記スタート、女性ライターが旧姓で銀行口座を開設できるか試してみた

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選択制夫婦別姓制度の進捗は……?

 今回の旧姓併記制度が導入された背景には、結婚後も旧姓で働き続ける女性が増えたことがある。

 姓の変更に伴う不便や不利益は先に述べた通りだが、中には現実的な不便や不利益だけでなく、キャリアが分断されたような感覚や、過去の自分が消えたようなアイデンティティの喪失を味わう人もいる。

 結婚後も、結婚前と同じ名字(氏)でいられれば、アイデンティティの喪失も、社会的な不便や不利益も解消される。そこで、求められてきたのが「選択的夫婦別氏制度」と呼ばれる、夫婦がそれぞれ結婚前の氏を称することを認める制度だ。

 しかし、自民党の安倍晋三首相は7月3日の夫婦別姓に関する党首討論会で夫婦別姓制度を「認めない」姿勢を貫いている。司法の世界でも、10月、11月と立て続けに夫婦同姓を定めた民法の規定を「合憲」とする判決が出ている。選択制夫婦別姓制度の実現はまだ遠い。

 旧姓を住民票に併記できるようになったことは、姓を変更した側の不便を少し解消してくれた。しかし、「特例」扱いでようやく銀行口座を使える程度では、まだまだ「夫婦別姓制度はなくても大丈夫」とはいえない状況だ。

 選択制夫婦別姓制度の導入や、旧姓を本名同様に扱えるシーンの拡大など、今後の展開に期待したい。

森下なつ/ライター

週刊新潮WEB取材班編集

2019年11月25日掲載

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