高校野球の球数制限、それでも残る課題を「元エース球児」ら語る

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野球が変わってしまう

「球数制限よりも、ほかにやるべきことがあります」

 そう語るのは、野球評論家の太田幸司さん。半世紀前、甲子園史上初の延長18回引き分け再試合で松山商業(愛媛)に敗れた三沢(青森)のエースだ。

「監督が、プロを目指す選手を預かっているのなら無理をさせない。これで最後、というなら多少の無理はさせてもいい。つまり、選手の能力をきちんと見極められる指導者のシステムづくりが必要だと思うんです。それともうひとつ、打者有利の金属バットを、低反発や細いバットに変えるべきです。いまのバットは飛ぶので投手はなかなかアウトが取れず、球数が増えるという側面がありますから」

 続いて、“悲劇の投手”、元巨人の大野倫(りん)さん。1991年、夏の甲子園で沖縄水産のエースとして決勝までの6試合で773球を投げ抜いた。大会後に右肘の疲労骨折が判明し、投手生命を絶たれ、外野手に転向する。

「1週間で500球はそこまで厳しくはないと思いますが、イニング数制限と、日程面の整備をするべきだと考えています。イニング数制限は球数制限より導入しやすい。球数を制限すると、投手が3球勝負にこだわるようになったり、遊び球がなくなる。打者も、最初の2球は振らなかったり、やたらとファウルで粘る場面が増えそうです」

 野球が変わってしまう、という。日程面については、

「過密スケジュールも改革できると思います。日程全体の長さを変えられないのなら、たとえばナイターを導入して1、2回戦は1日5試合を消化し、ベスト8ぐらいからは間隔を空ければいいのではないでしょうか。ナイターが健全じゃないとは言えません。夜遅くまで塾に通う高校生はいるわけですからね」

 球数が制限されていれば、今夏、大船渡(岩手)の佐々木朗希(ろうき)投手にまつわる論争は起こらなかったかもしれない。だが、かように、議題はまだまだ残っている。

週刊新潮 2019年11月21日号掲載

ワイド特集「パレードと人生行路」より

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