東大、東北大、早大…5年制「高等専門学校」はなぜ難関大学の編入に強いのか
なぜ難関大に編入できる?
どうして高専は難関大の編入に強いのか?
まず、間口が広い。工学系の学科のある国立大は、すべてが高専生の編入を受け入れている。また、国立大の場合、編入生の大半を高専生から選ぶというところが少なくない。
その編入試験は大学入試と性質が根本的に違う。試験の中身は各大学でバラバラだが、大半が筆記試験と面接(口頭試問も含む)を課す。ただし、編入なので、英語と専門課目以外は基本的には課されない。「理系なのに日本史も暗記しなくてはならない」という高校生とは違う。
編入試験は複数の大学を受験できるのも特徴。大学ごとに試験日が違うからだ。例えば、東北大と筑波大などの併願も可能。もっと受けることも出来る。これも高校生にはない高専生独特のメリットだろう。また、各高専から大学への推薦編入という形もある。
ここまで高専の良いところを挙げたが、高専ならではの過酷さもある。授業が厳しく、単位の取得が簡単ではないことだ。2015年の文部科学省の調査によると、全高専生のうち3・7%(2079人)が留年を経験した。高校生の留年率は約0・5%に過ぎないので、かなり高率だ。
とはいえ、難関大に入りたいのなら、やはり高専はお得に違いない。このルートがベストと言うつもりはないが、高校に行かずとも難関大に進めることは知っておいたほうがいい。
近年、難関大に入るのは、限られた進学高の生徒ばかり。それどころか、「このレベルの高校の生徒はこれくらいの大学に進む」というパターンがほぼ固まってしまった。これでは社会の多様化の妨げになりかねない。
戦前は違った。学制が「複線型教育」で、旧制中学から旧制高校、大学へと進む者ばかりではなかった。5年制の旧制中学の4年修了時点で旧制高校に行く者もいたし、中卒後に2年制の予科を経て大学に進む者もいた。現在の教育大に近い高等師範学校や実業学校もあった。さまざまなルートで大学に行けたし、専門教育が受けられた。
戦後は、連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)の意向による学制改革で、現在の「単線型教育」(6・3・3・4制)になった。戦前の複線型教育の欠点は、社会的地位によって進学する学校がある程度決まっていたことだとされる。「裕福な者でないと旧制中学、旧制高校に行けない」ということだ。
だが、現在では新たな教育格差が指摘されているのは知られている通り。教育費を捻出できない家庭の子供は、進学高と難関大には入りにくくなっている。
だからこそ、大半が国公立で、学費が安い高専に注目すべきだろう。安く住める寮を併設している高専も多い。茨城高専、群馬高専、福島高専にはいずれも寮がある。
高専経由に限らず、大学進学ルートを複線化することが、教育格差を緩和し、社会の多様化につながるはずだ。
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