英語民間試験ごり推しの裏に「ベネッセ」の教育利権…高校も大学も逆らえない

国内 政治 週刊新潮 2019年11月14日号掲載

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高校も大学も逆らえない

 もはや受験生ファーストでなく、ベネッセ・ファーストの入試改革が進んでいたようにさえ見えるが、そうなった背景を教育ジャーナリストが説明する。

「14年に発覚した個人情報漏洩事件で、ベネッセは250億円を超える特別損失を計上。また事件を機に主力の“こどもちゃれんじ”や“進研ゼミ”など通信教育の会員が減少したため、一刻も早い業績回復が急務とされていました。その点、入試に英語民間試験が導入され、毎年、仮に20万人の受験生がGTECを選ぶことになれば、1回7千円として1人2回受けるとして、黙っていても28億円の売り上げが加算されます。そのうえ、GTECを受ける子は当然、GTECを作っているベネッセの問題集を買い、通信添削も受けておこう、ということになるでしょう」

 だが、それだけではない。

「ベネッセの営業マンは全国の高校を巡回し、模試や教材を売っていますが、高校にすれば買わざるを得ない状況にあるのです。ベネッセは8月には、大学入試共通テストに新たに導入される記述式問題の採点業務を、61億円で落札しています。加えて英語民間試験でも、GTECの受検者が多ければ、入試に関する情報をもっているベネッセの教材を、高校が無視できるはずがないのです」

 さらには、大学にもプレッシャーをかけていた、と打ち明けるのは、某大学関係者である。

「ベネッセは大学に、合格者のGTECのスコアが何点だったとか、他大学との併願状況がどうだとか、受験生情報を売りさばいています。実際、私学の担当者は、そういうデータを見て受験日を設定したりしますが、特に併願情報については、ベネッセは1学部につき350万円で販売しています。教育に関わる企業の倫理として認められるものでしょうか。リクナビが企業に学生の情報を売って問題視された件と、どう違うというのでしょうか」

 ベネッセに聞くと、

「スコアデータは個人が特定できないもの」

「志望動向を350万円で販売している事実はない」

 と答えるのだが。

 また、別の大学関係者が語るには、

「世界大学ランキングを発表する『タイムズ・ハイヤー・エデュケーション』誌を有するTES Globalの国内総合パートナーで、各大学にランキングの上げ方を指南しています」

 入試が牛耳られ、大学は弱みを握られ、ベネッセに逆らうのは、高校にとっても大学にとっても困難だったという。それがいまは頼みの綱が失われ、株価も急落した。しかし、

「下村氏は見送りが決まってからも、まだ入試改革をあきらめていません。自民党内の部会では、国が英語民間試験の導入を私学助成金で支援することまで仄めかしています。導入しなければ助成金をもらえないのか、と大学側は受けとりかねません」(羽藤教授)

 絆は強いようだが、「甘い汁」は、未来を担う受験生を犠牲にして吸い上げられるものだと、業者も政治家も、どこまで認識しているのか。教育さえ利権の対象にする姿勢は、醜聞が噴出する安倍内閣のタガの緩みと、無関係ではあるまい。

特集「『東京五輪マラソン』は上等な生け贄! 『橋本聖子五輪相』に『違法献金』の企業グループは『北海道カジノ利権』プレイヤー」より

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