英語民間試験ごり推しの裏に「ベネッセ」の教育利権…高校も大学も逆らえない

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楽天からベネッセへ

 京都工芸繊維大の羽藤由美教授は、

「今回の入試改革をさかのぼれば、安倍内閣のもとで13年、教育再生実行会議が第4次提言を公表したことに端を発します。このときの文科相は下村さんで、それ以来、すべては“民間ありき”でズルズルと話が進んでいきました」

 と指摘。文科省担当記者が補って説明してくれるが、そもそも、英語民間試験は教育界からでなく、産業界から湧いた話だった。

「13年6月、“大学の英語入試への民間検定試験の活用をめざす”という内容が盛り込まれた、第2期教育振興基本計画が閣議決定されました。ただ、そこに至るまでの前段があります。13年2月、楽天の三木谷浩史会長兼社長が、自民党の教育再生実行本部で“英語ができないため日本企業が内向きになって、世界の流れに逆行している”と指摘、大学入試にTOEFLを導入することを提言しました」

 すると、それを受けるかたちで翌3月に、

「遠藤本部長の下、実行本部がまとめた教育改革案に“TOEFLを大学入試に活用する”という内容が組み込まれました。続いて5月には、教育再生実行会議が、“TOEFLなどの民間試験の活用”などを含む提言を安倍総理に提出し、翌月の閣議決定につながっていきます」

 また、実行会議では、

「“TOEFLは問題が難しすぎるから、ほかの試験を活用するべきだ”という意見が出されました」

 こうしてGTECなども認定の対象になったのだが、ともかく、民間への“払い下げ”を主導したのが、塾や予備校業界から受ける献金により、たびたび問題視されてきた下村氏であった。

 ただし、下村氏とタッグを組んだ感のあった楽天について、江利川教授は、

「楽天社員の葛城崇さんが、14年から2年間、文科省初等中等教育局国際教育課に出向して、読む、書くのほか、聞く、話すを加えた英語4技能化のキーパーソンとして、英語教育改革に従事していました」

 と話すが、週刊誌にそのことが報じられると楽天は失速。その後、急速に食い込んだのがベネッセコーポレーションで、

「入試用に認定された民間試験のうち、ベネッセが主催するGTECが、大勢の受験生を集める試験になるのではないかと、最有力視されていました」(同)

 だが、ベネッセについて深く覗く前に、子供たちの一生を左右する入試改革が、いかに民間主導で進められていたか見ておきたい。文科省関係者が言う。

「各民間試験とセファールの対応関係を決めるための文科省の作業部会は、メンバー8人のうち5人までもが、GTECのベネッセや、英検の日本英語検定協会など、民間試験を実施する団体の幹部職員でした。民間試験をどう測るかも、民間企業にお伺いを立てて決めているんです。また、作業部会の主査は、日本英語検定協会主催の試験TEAPの開発者の一人、上智大学の吉田研作教授で、主査代理である東京外大の根岸雅史教授や、部会員でやはり東京外大の投野由紀夫教授は、共にベネッセのHPにGTECの推薦者として名を連ねています」

 ベネッセ関係者が目立ってきたが、この程度にはとどまらないという。

「14年12月、中央教育審議会会長として“民間資格・検定試験の活用”という方針を打ち出した安西祐一郎氏は、GTECをベネッセと共催している進学基準研究機構(CEES)の評議員でした。教育再生実行会議委員だった武田美保氏もCEESの理事。元民主党参議院議員で、14年に当時の下村大臣に招聘されて文科省参与に就任、15年から18年まで文科相補佐官を務めた鈴木寛氏は、ベネッセグループの福武財団の理事です。文科省とベネッセグループは一心同体で、“第二の加計疑惑ではないか”という声も聞こえます」

 そう語る文科省関係者によれば、個別の大学にもベネッセ関係者の天下りが増加中だという。

「たとえば、大阪大学高等教育・入試研究開発センターの山下仁司教授は、ベネッセでGTECの開発統括を務めた人。旧帝大で阪大だけが英語民間試験を必須としていたことと、関係があるといわれています」

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