事故に遭いやすい? ブチギレやすくなる? 起業したくなる? 人間をも操る寄生虫の正体とは 【えげつない寄生生物】

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 ゴキブリを奴隷のように支配したり、泳げないカマキリを入水自殺させたり、アリの脳を支配し最適な場所に誘って殺したり――、あなたはそんな恐ろしい生物をご存じだろうか。「寄生生物」と呼ばれる彼らが、ある時は自分より大きな宿主を手玉に取り翻弄して時には死に至らしめ、またある時は相手を洗脳して自在に操る様は、まさに「えげつない!」。そんな寄生者たちの生存戦略に、昆虫・微生物の研究者である成田聡子氏が迫るシリーズ「えげつない寄生生物」。第14回は「ヒトをも操る寄生虫」です。

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 あの猫独特のやわらかな毛、しなやかなキャットウォーク、つかみどころのない性格、そして、甘えているときに出すゴロゴロという声。

 猫の祖先は約13万年前に中東の砂漠などに生息していたリビアヤマネコだと考えられています。キプロス島にあるシロウロカンボス遺跡から人間と一緒に埋葬されているネコ科動物の遺骨が発見されたことから、約9500年前には人間のパートナーとして扱われていたと予想されています。

 古代エジプトでは猫は神の象徴として崇拝されていました。逆に中世ヨーロッパでは悪魔や魔女の手先とされて大量虐殺がおこなわれます。いずれにしても、神や悪魔の化身と思われる神秘的な雰囲気が猫にはあるのでしょう。

 さて、その古代から現代にいたるまで9000年以上もの長きにわたって愛されて、人間と生活空間を共にしてきた猫はトキソプラズマという宿主の行動変化を引き起こす微生物をもっているというお話を前回いたしました。この微生物は、猫の体内に戻らなければ繁殖できないので、感染したネズミの行動を変化させ、猫を恐れなくさせて捕まりやすくすることで猫の体内に戻っていきます。

 そして、この行動操作はネズミだけではなく、人間にさえ起きているようなのです。

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