コンビニ「Xマスケーキ」「おせち」が早くも販売開始 社員、バイト“自腹買い”の実態

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自腹買いの裏側

 ただこの問題の難しいところは、表向き、“自腹買いは行われていない”とされている点だ。実際セブンに聞くと、

「自腹買いということはしていない。目標が達成出来ないからと言って、FC会議で社員を吊し上げるということもない」(セブン&アイ・ホールディングス広報センター)

 と答えるのみだ。どういうことなのだろうか? 元セブン本部社員の解説によれば、

「OFCの上司にあたる部長級のZM(ゾーンマネージャー)や課長級のDM(ディストリクトマネージャー)は、『自腹買いをしろ』とは口が裂けても言いません。社長以下の幹部クラスでは『自腹買いは卑怯なことだ』と言っているほどです。しかし、現場で自腹買いが定着してしまっているのは事実。私が在籍していた頃は、普通に売ってはとうてい達成出来ないような目標がZM、DMから命じられ、泣く泣くの自腹買いが行われていました。ですから、建前では自腹買いはないことになっているんです。幸い、私の上司はあまり自腹買いをしなくてはならないような目標を吹っ掛けてくる人ではありませんでしたけれど」

 世間のコンビニ業界への風当たりを気にしてか、最近では個数を指定しての“目標”のお達しはされないという。そもそもZMやDMの裁量による部分も大きく、元社員の証言にあるように、ノルマは店舗によってまちまちだったようだ。

 ただし、ノルマそのものが完全になくなったわけでは、もちろんない。ケーキやおせちではないが、比較的最近に私が耳にしたところでは、ある店舗では「ひと月におでん1000個」というノルマがあった。このあたりは本部も把握しきれていないのだろう。業界の“闇”の部分といえるかもしれない。

 先の現役本部社員は、こんな愚痴も漏らす。

「そもそもクリスマスケーキなんて12月に入るぐらいの時期にケーキ屋さんなどで予約するもの。今の時期から、しかもコンビニで売れる訳がありません。自腹で買ったクリスマスケーキを、学生時代のゼミの友人に買って貰ったりしたこともあります。セブンに入社すると、忙しすぎで社外の人との付き合いがほとんどなくなりますから、なけなしの人脈ですよ。おせちは10万円分ぐらいを実家に送ったりもしましたね」

 ノルマ達成のために、今後も自腹買いはつづく……。

角田裕育(すみだ・ひろゆき)
ジャーナリスト。兵庫県神戸市出身。北大阪合同労働組合青年部長、ミニコミ誌記者などを経てフリーに。著者に『セブン-イレブンの真実~鈴木敏文帝国の闇~』(日新報道)、『教育委員会の真実』(宝島社)。

週刊新潮WEB取材班編集

2019年10月16日掲載

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