1千万円稼ぐSNSめぐり監禁・強要された被害者が語る「高校生の仁義なき戦い」

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面白コンテンツからビジネスへ

「親からスマホを買ってもらったのは中3の時です。クラスの皆はいつも、LINEに投稿された動画や記事の配信を見ており、その話題で盛り上がっていた。自分も憧れ、動画や記事を投稿するようになりました。それを気に入って見たり読んだりしてフォローしてくれる人が100人、500人、千人……と多くなっていくのも面白かったのです」(被害少年)

 フォローしてくれる人=フォロワーを読者と言い換えてもいい。その読者の気を惹くコンテンツを集めては、10分に1度くらいの頻度で投稿する。面白いと思った読者は友達にそれを伝える。結果、コンテンツは拡散して行く。それは具体的には、「おススメおもしろ画像」や「これが解けたらIQ180!? なぞなぞ問題集」と題された記事を集めたものであり、のみならずニュースや地震速報も流した。これに付随して、「地震の時に何があれば安全か」という記事も届ける。

「そういう風にすると、災害の時に親身になってくれるアカウントだということで信頼度があがっていくんです。逆に災害が起こっているのにネタ動画をあげていると、こんな時にふざけるなとクレームが入る。中高生が興味を持つもの全てを流す『ネット版オンライン新聞』のような存在でしょうか。LINEではフォロワーがメッセージを送ることもでき、1日に数千件も来ることがありました。フォロワーとの関係は芸能人とそのファンみたいなもので、だから返事をすることも大事。ファンにすれば、やりとりできるだけで嬉しいですからね」(同)

 3年続けてノウハウは蓄積された。それまでは趣味に留まっていた投稿がビジネスへ舵を切るようになったのは、今から1年7カ月ほど前のことだった。

「フォロワー数300万を誇るトップの人が、投稿の際にブログへのリンクを貼り始めたのです。自分もその人に憧れていたので、同じことをやるようになりました。LINEだと広告で収益をあげることは不可能ですが、ブログを介すれば広告をつけることができる。LINEでフォロワーを多く抱えることが価値を持つようになったのです」(同)

 ブログを開設してそこに広告バナーを設置する。他方、LINEにはそのブログに飛べるような設定をした記事を投稿する。フォロワーがブログ上にある広告をクリックすると10円くらいが懐に入る仕組みだ。

「その合計が年間1千万円ほどありました。アカウントを四つ作って、そのフォロワーが延べ200万人。ひとりで捌ききれず、営業担当、運営担当4人、ブログが掲載されるホームページの更新担当やメンテナンス担当など、10人ほどのチームでやっていました」(同)

 メンバーはみな同年代で、彼同様、LINEに様々な投稿をしてきた“同業者”たちだ。

「“ウチのグループに参入しない?”って声をかけて集めました。全国各地にいて、直に会ったことがないので顔は知りません。業務を委託して達成したらお金を振り込むという形式でやっていて、そういった人件費にサーバー代、通信費などがかかるので、個人としての収入は1千万円もなく、また、確定申告をして税金も支払いました。税金は遅れてやってくるので困りましたね」(同)

 ともあれ、そういった同業者、時には競合者たちが意見交換、あるいは丁丁発止する場もLINEには設けられており、数十人が集っていた。その中には、今回の犯人のうち2人も加入していたという。

(2)へつづく

週刊新潮 2019年10月10日号掲載

特集「SNSで1千万円荒稼ぎ! シノギと化した覇権争い! 監禁被害者が語る『高校生の仁義なき戦い』」より

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