「曺国疑惑」の目くらましか 30年前の未解決大量殺人事件で突如、容疑者が特定

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チョ・グク問題と並行して浮上した「最悪の未解決事件」の真相

 曺国(チョ・グク)法相任命を巡り、大揺れに揺れている韓国。一方でもう1つ、先月下旬から現地メディアを賑わしている事件がある。1986~91年、10人の女性が性的暴行後に殺された「華城連続殺人事件」がそれだ。

 同事件は迷宮入りしたまま2006年4月に最後の時効を迎え、韓国で最悪の未解決事件となった。ところが今年9月19日、京畿道 南部地方警察庁が突然「容疑者を特定した」と発表。別件で1995年から服役中の受刑者イ・チュンジェのDNAが、3件の殺人の遺留品と一致したというのだ。さらに10月2日、この受刑者本人が一連の事件に加えて5件の殺人を新たに自白したと報じられた。

 約30年越しの執念で、事件の真相解明に迫った韓国警察。だが韓国社会の反応は賞賛どころか、司法に対する批判と不信が再燃している。というのも事件当時のずさんな捜査の実態に加え、非人道的な捜査手法が改めて浮き彫りになっているからだ。

「ひとまず捕まえてみる」式のずさんな捜査で市民4人が自殺

 事件名の「華城」は、連続殺人の舞台となったソウル近郊の京畿道華城郡(当時)のこと。10件の殺人のうち1件は模倣犯の犯行として検挙に至っており、迷宮入りした連続殺人は残り9件だ。

 そのうち6件は1986年9月~1987年5月に発生し、いずれも犯行現場が半径数km内に集中。だが警察は1人目の犠牲者を交通事故死と間違えるなどの失態を重ね、はかどらない捜査に苛立っていた。当時は韓国国内でDNA検査ができないなど技術的な限界があったことに加え、軍事政権下で頻発していた民主化デモの取り締まりに警察の人員が割かれていたともいわれている。

 警察は世論の批判を浴びるなか、1987年1月にようやく連続殺人として京畿警察庁に捜査本部を設置。こうして時効までに延べ205万人の捜査員が動員され、周辺市民ら2万1280人が捜査対象となった。そのうち容疑者として取り調べを受けたのは、3000人に上る。

 ただし捜査手法は、現地メディアの言葉を借りると「ひとまず捕まえてみる」式の強引なやり口だった。自白強要の拷問も行われ、冤罪被害が続出。現地紙「ハンギョレ」(2019年9月20日付)によると、取り調べを受けた後に自殺した市民は4人に上る 。不起訴となった後も周囲から犯人扱いされて社会生活が破綻するなど、捜査の二次被害も深刻だったようだ。

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