「田舎暮らし」希望者は必読 悪徳不動産業者に騙されないための“鉄則”

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オーナーに“直訴”する方法も

【鉄則5】まずは建物と土地、諸経費込みで250万円の物件を狙え

 気に入った別荘地は見つかったが、気に入った物件がない。そういう地域には、賃貸物件も存在しないものだ。

 そんな時はまず、割安の物件を探すことをおススメする。現在、地方の別荘物件は、バブル期に第一線で働いていた第1次ベビーブーマーが建てたものが、世代交代を迎えている時期にあたる。基本は投げ売りというのが業界の大勢なのだ。

 第1次ベビーブーマーは現在、70代。彼らが働き盛りだったバブル時代、地方のリゾート開発や別荘地開発が進んだ。「普通のサラリーマンでも別荘が持てた」という恵まれた世代だったのだ。

 それから30年以上が経過、老朽化した別荘に多額の費用をかけてリフォームする人は少ない。そのため、安くて良い物件がゴロゴロしている。

 最近では200万円を切るものさえ、定期的に出る。購入したとしても、数年住めばローンの負担額は家賃と変わらない。築30年とはいえ、多少のリフォームを行えば、まだまだ住むことができる。

 そこに住みながら、理想の物件が出ないか待つこともできるし、近隣に新しい移住の候補地を探すこともできる。

 購入費だが、後悔しないためには、まずは諸経費込みで250万円が上限だろう。家賃が月5万円を割る物件は、地方といえども多くはない。まして戸建てなら、月5万円の賃貸物件は少ない。

 5万円×12か月で60万円。少し余裕を見て年間70万円としよう。3年借りれば210万円。200万円の別荘なら、購入しても元が取れるわけだ。

 3年という歳月は、その土地を知るためにも、また飽きるにも、ちょうどいい期間である。1年目は全てが新鮮だ。2年目は慣れもあり、落ち着いて過ごすことができる。心の余裕が生まれる。

 3年目は庭造り、散策、現地でのサイクリング、陶芸、ステンドグラスなど、新しい趣味に挑戦する機会も増える。田舎暮らしに満足を覚えていれば、「もう少し家を広くしたい」という欲が出てくる。

 逆に「やはり自分には田舎暮らしには向かない」という結論に辿り着いた人もいるはずだ。そういう人は、別荘を手放し、都会に戻るべきだろう。

 土地が気に入って本格的な物件購入に向かうにしても、その土地との相性が合わずに撤収するにしても、賃貸並みの金額で購入した物件であれば、実際の家計収支上でも間違いなく損をしない。それこそ充分に納得して、後悔なく次のステップに移れるというものだ。

 もし都会に戻る際も、うまくいけば200万円で売れるかもしれない。例えば恩納村など沖縄のリゾート地でも、長野の山間部でも、土地の価格はたいがい1坪1万円である。

 別荘購入とはいえ、上物の価格は数十年も経過すればタダ同然。つまり200万円で別荘を購入するということは、200坪の土地を買うことと同じだと考えたほうがいい。

 自分と同じ感覚で移住を考えている希望者に、ほぼ同額で売り抜けることも絵空事ではないのだ。実質的に土地の評価額で売買されており、坪単価1万円は底値だ。1万円を割り込む可能性は決して高くない。

 転売し、次の別荘地に移住することに成功すれば、預貯金など自分の保有資産を大きく目減りさせる心配もない。これが購入費250万円を推奨するゆえんである。

 ただし、かつてバブル期に一斉に建てられた別荘の建築現場には、東南アジアからの出稼ぎ労働者らがあふれていた。彼らは器用で、言われた仕事を覚えるのも早いが、それでも、プロかと言われれば大工としてはアマチュアである。

 それゆえに、同時期に建てられたものでも、施工や仕上がりは差が大きく、築何年という情報がそのまま物件の評価には反映しきれない。しっかりしたものと、いい加減なものとの開きが、大きすぎるのだ。

 田舎での移住や別荘物件を専門に扱う、ある企業の社長を取材したことがある。社長はバブルを経て倒産寸前にまで追い詰められた企業の再生を請け負ったが、バブル期に施工された物件の対応に苦労したという。

【鉄則6】よさげな休眠物件には、直接、オーナーに手紙を出してみる

 ようやく国も自治体も、休眠地や空き家が増えていることへの対策に乗り出した。この状況は、移住希望者にとっては朗報である。

 休眠地や空き家への課税強化は、所有権者に対する活用インセンティブとして働く。「これを機会に手放せるものならば手放そう、売ってしまいたい」というきっかけともなるからだ。

車で走っていると、立地はいいのに、庇(ひさし)やバルコニーが崩れたままになっているなど、もう何年もオーナーが訪れていないような建物をよく見かける。

さらに、こんな場所に新築できれば眺望も最高だろうな、という場所もある。日本には国道、県道、林道が張り巡らされているので、およそ人の入れない山はないに等しい。道路から少し入った場所に、周囲と隔絶された静謐な理想物件が眠っていることも少なくないのだ。

 そうした休眠物件は、自ら法務局に足を運び、登記を調べて所有者を割り出し、「個人なのだが売却意思はありませんか」と手紙を出すと良い。

 もう自分だけでは訪れることもままならない、高齢のオーナーも少なくない。そうした別荘物件は、親が子に相続しようとしても、維持費の問題がのし掛かる。子供たちにとっても、辺鄙な場所にある別荘など“負動産”でしかない。

 そのため高齢のオーナーたちは、どうしていいかわからずに放置していることが少なくない。売れるものならば売ってしまいたいが、自分で現地の不動産業者と交渉することは億劫だ。そのため、休眠物件が生まれるわけだ。人気の別荘地周辺でも、それこそ山のようにある。

 ただ、仮に山中で理想の土地、建物を発見したとしても、法務局で登記を閲覧することなど大変ではないか、と心配する方もおられるだろう。

 そんな時は、まずグーグルマップを活用するのがいい。グーグルマップは、どこまでも縮尺を細かくして詳細にしていくと、最後はストリートビューの画像が表示される。その手前で当該場所を指すと、細かな住所まで表示される。

 それさえ判れば、あとは法務局で地番を調べ、土地や建物の登記を調べることができる。持ち主に丁寧な手紙を添えて出せば、現地の不動産相場よりも安価で譲ってもらえることもある。

 この場合、不動産業者を探す必要もない。手数料も発生しない。不動産登記も、基本的には法務局が手取り足取り最後まで窓口で面倒を見てくれる。それが面倒だという人は、登記だけを現地の司法書士に頼めばいい。

 司法書士の事務所は、法務局の周辺に集中している。飛び込みでまったく問題はない。不動産業者と司法書士は、密接な関係を結んでいるところがある。斡旋料として司法書士からキックバックを取っている不動産業者も存在するほどだ。自分で司法書士に依頼すれば、料金が安くなる可能性もある。

取材・文/清泉亮(せいせん・とおる)
移住アドバイザー。著書に『誰も教えてくれない田舎暮らしの教科書』(東洋経済新報社)

週刊新潮WEB取材班

2019年10月9日掲載

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