アリババ創業者ジャック・マーと「燃えろアタック」荒木由美子の知られざる親交

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いきなり逆立ち

 小鹿ジュンとは荒木が演じた主人公の役名だ。

「『燃えろ』は中国で視聴率が80%を超えていたと聞いています。しかも、2000年代初頭まで繰り返し再放送されていたので、幅広い世代に馴染みがあるドラマなのです。マーさんは中国での放映当時、大学受験に2度も失敗し、精神的にドン底にいたと。そんな時、どんな苦境にもめげず、立ち上がってコートに向かうジュンを見て励まされたと語るのです。そして、“事業で成功し、あなたを自分のお金で中国に招待することが私の長年の夢でした。中国に来てくれませんか”とまで言って、頭を下げられるんですよ。その後も人を介して熱心なラブコールをいただいたので、ありがたくお受けすることにしたわけです」

 1カ月後、上海空港に降りたった彼女を待ち受けていたのは、垂れ幕を掲げた、ロビーを埋め尽くさんばかりの人だかりだった。

「今もみんなジュンのことを覚えてくれているんだと感激しました。翌日、マーさんの出身地の杭州市でマーさんと再会。会社で盛大な歓迎セレモニーを開いていただきました。社内を案内してくださったマーさんは、私をある部屋に連れていってくれたんです」

 そこは、机も椅子もないだだっ広い部屋だったが、

「そこでマーさんは数人の社員とともに、いきなり逆立ちを始めたのです。“ジュンもやっていたでしょう。わが社ではここを『逆立ち部屋』と名付けているんです”と言ってね。私は胸が熱くなって……。ドラマで困難にぶつかると、いつもジュンは逆立ちする。それをマーさんは真似るばかりか、社員の方々にも勧めていたと言うんですから」

 彼女もマー氏との出会いで人生が変わったという。

「中国で私を歓待してくれた人たちを見て、こんな私でも、まだ人を喜ばせることができるかもしれないと思い、帰国後、仕事に復帰しました。今の私があるのも、マーさんが『燃えろ』を観ていてくれたおかげ。心から感謝しています」

週刊新潮 2019年10月3日号掲載

ワイド特集「風立ちぬ」より

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